介護職の看取りは辛いって本当?具体的なキツさや不安・解消法を解説
更新日時 2022/08/08
「患者さんが亡くなるのが辛い…」
「看取りケアの不安を和らげる方法は?」
このようにお考えの方も多いでしょう。
日常的に人の死を目の当たりにすることから看取りが辛いと感じる介護職員も多いですが、患者さまやご家族への心体のケアは、人が最期を迎えるまでの期間を穏やかに過ごすために重要な仕事となります。
業務に対する不安や恐怖は、看取りに関する考え方や視点を変えること・看取りケアの本質を理解することで和らげましょう。
今回は、看取りケアの本質と看取りケアならではの視点を解説し、仕事の辛さや不安を和らげる方法について紹介します。
- 看取り介護は利用者さまとの別れが辛い
- 人の死への恐怖や業務の不安を抱えがち
- 看取り介護ならではの視点を持って気持ちを整理しよう
そもそも看取りとは?
介護職における「看取り」とは、延命治療などせず、患者さんが自然に寿命をお迎えになるまでの過程を見守ることです。
患者さまが穏やかな死を迎えるためには、看取り看護は必要不可欠な業務となるので、辛いから・不安だからと目を背けずにしっかり向き合いましょう。
看取り看護は、介護サポート・生活援助など日々のケアを通じて、精神的・身体的な苦痛を緩和することが目的です。
また、患者さまの人としての尊厳を守り、穏やかに最期を迎えられるようサポートしていきます。
看取りとターミナルケアとの違い
よく混同されがちな看取りとターミナルケアですが、過ごし方・治療方法のどちらに重点を置いているのかという点が異なります。
看取り介護は、余命をどのように過ごしてもらうかという点に重きを置いたケアです。
食事・排泄の介護・援助など、主に日常の生活において必要なケアを中心に行っており、施設・自宅等で安らかに終末期を過ごしていただくことを目的としています。
ターミナルケアは、どのような治療を施すかという点に着目したケアです。
終末期医療・終末期看護などとも呼ばれるターミナルケアは、以下の3つに大きく分けられます。
- 精神的ケア
- 身体的ケア
- 社会的ケア
精神的ケアでは死への不安や恐怖などを和らげ、身体的ケアでは患者さまの痛みを緩和する投薬治療などを行います。
また、治療費などの負担を軽くする社会的ケアも重要です。
看取りとターミナルケアでは上記のように、重点を置くポイントが異なりますが、どちらも終末期ケアを考慮しているとという点では似ています。
看取りと緩和ケアとの違い
緩和ケアとは、患者さまの疾病に由来する身体・精神的な苦痛を和らげるために行われるケアことを指します。
看取りとターミナルケアは、終末期のケアを考えているという共通点がありましたが、緩和ケアは必ずしもそうではありません。
緩和ケアでは、患者さまに延命治療を行うこともあり、延命治療は行わない看取りやターミナルケアとは異なっています。
看取りにおける介護職の役割・仕事内容とは
一般的な介護職と似た部分もある看取りですが、決定的な違いは、あくまで患者さまが穏やかに最期のときを迎えられるようサポート・ケアすることが重要という点です。
それを踏まえた上で、看取りには以下のような役割が求められます。
- 食事や入浴など日常的なケアと清潔維持
- 身体的・精神的な緩和ケア
- 患者さまとの十分なコミュニケーション
- 容体や状態の確認と経過記録
- 家族への説明と不安解消のための相談役
- カンファレンスへの参加
- エンゼルケア
看取りケアでは、日常的なケアを行っていくだけでなく、患者さまと十分なコミュニケーションを取り信頼関係を築いていくことが必要です。
また、頻回に来訪して、容体はどうか苦痛や不安はないかなどの確認をし、経過を記録していきます。
看取りの具体的な仕事内容としては、以下の通りです。
- 患者さまの望む食べ物・飲み物をお出しする
- 入浴・散髪・口腔ケア・寝具など身の回りの清潔維持
- 体と心の苦痛を取り除くためのケア
- 家族へのケア・連絡・説明
- 死亡時の援助
看取りの病棟では、患者さまの体に負担をかけ過ぎない範囲で、できるだけの望みを叶えるように努めます。
また、ご家族の付き添いのために寝具を用意したり、こまめに連絡を入れるのも介護者の仕事です。
特筆すべきは死亡時の援助で、危篤の兆候が現れた際には医師や家族に連絡をし、手を握る・声かけをするなど家族にアドバイスします。
介護職員が感じる看取りへの具体的な辛さ
以下では、看取りにおける仕事の辛さを解説します。
上記で解説した通り、看取りケアは患者さまとご家族が穏やかに死を受け入れられるようサポートしていく仕事です。
しかし、看取りにはこの仕事独特の辛さがあるので、介護職員として働くにあたって辛さを十分に把握しておく必要があります。
人の「死」への純粋な恐怖
担当する患者さまが一日一日死に近づいていくのを傍らで見ている職員には、人の死に対する純粋な恐怖は避けられないものです。
死とは誰にとっても恐ろしいものですし、まして長い間身近でケアを行ってきた患者さまが亡くなるのは職員にとっても悲しいものなので、恐怖を完全に克服するのは難しいでしょう。
しかし、研修に参加する・先輩に教えを乞うなどし、自分にできることの精一杯を尽くすことで、悲しみや恐怖を少しでも軽くしていくことが大切となります。
1人夜勤の時に入居者さまに何かあったら
1人夜勤の時に不測の事態が起こると、方々への連絡や対応などすべて1人で行う必要があり、精神的・身体的に負担が大きいです。
介護現場では、日中は基本的にチームで働くことが多いのですが、業界の人手不足などもあり時には職員1人で夜勤を任されるケースもあります。
1人のときには、アドバイスや指示をしてくれるをしてくれる人は誰もいないため、失敗しないかと不安になる職員は新人ばかりではありません。
エンゼルケアへの抵抗
エンゼルケアとは、亡くなった患者さまのご遺体を綺麗に整えてご家族にお返しする業務ですが、エンゼルケアが辛いと感じることも新人のうちはよくあります。
亡くなられた方の体に触れるのは抵抗を感じるものですが、残されたご家族はもちろん、葬儀会社や搬送業者のためにも必要なものです。
エンゼルケアの処置は、亡くなられた数時間後までに終わらせなければならないため、その必要性を考え心づもりをしておきましょう。
看取りケアへの不安を和らげる方法とは?
上記で解説したように、看取りケアに不安を抱く職員も多いのですが、その必要性や重要性をよく考えて克服していかなければいけません。
以下では、看取りケアへの不安をどう和らげていくのか解説します。
看取り介護へのしっかりとした知識を身につけよう
まずは、看取り介護へのしっかりとした知識を身に付けましょう。
よく知らないからこそ不安であり怖いのであり、知らないものを知らないままにしておくと不安が解消されることはありません。
ネット・本・ユーチューブ・SNSなど情報源はどこでもいいので、まずは手広く看取りケアの知識を学びましょう。
実際に看取り介護を経験した人が身近にいる場合は、その体験談を話してもらうのもおすすめです。
看取り介護ならではの視点を取得しよう
看取り介護は、通常の介護現場と異なり、第一に優先されるのは患者さまやご家族の想いです。
看取り介護の現場にいらっしゃる患者さまは終末期を迎えた方なので、改善・回復を目的としたケアではなく、苦痛や不安を和らげ穏やかに余命を過ごすためのケアを求められます。
そのため、通常なら許可できないような状況でも入浴したり、好物を少量なら食べたりも許可するのが看取り介護です。
看取り介護ならではの視点を持つことで、ケアに対する不安はなくなるでしょう。
業務を詳細に記録しよう
すでに看取り介護を経験しているのであれば、日々の業務内容を記録していくのも不安緩和の方法としておすすめです。
業務内容を記録することで、患者さまの死を冷静に受け止められ、今後のケアの向上にも繋がります。
記録はできるだけ詳細に書き出し、経験したこと・思ったこと・改善点などもすべて書いて残しましょう。
また、記録を残していけば、今後新しく入ってくる新人にも臨場感のある体験談として伝えていくことが可能です。
自分の仕事の内容を的確に把握しよう
自分の仕事について、的確に把握することで業務への不安はなくせます。
患者さんも十人十色なので、すべてが同じようになるとは限りません。
しかし「こうなったらこうする」というようにある程度の業務をテンプレート化して把握しておくと、もしもの時にも冷静に対処できるようになるのでおすすめです。
1人で抱え込まずチームで助け合おう
介護の現場はチームワークであり、不安は一人で抱え込まずに周囲に打ち明けてみることも大切です。
いつまでも自分一人で悩んでいても解決しないこともありますし、患者さまが亡くなるまでの最後のひと時を任されているのですから、いつまでも不安や悩みを抱えたままで業務にあたるのはよくありません。
経験豊富な先輩や上司に話してみるなどして、不安はなくしていきましょう。
また、夜勤などで少ないスタッフで対応することによる不安もあります。
看護師なども含めた職場のチーム内で、日頃から緊急時の対応やオンコールの目安を明確にしておくなどし、緊急時には支え合える環境を作っていきましょう。
「別れ」に対してどう準備するか
看取り介護では、入居者さまとの「別れ」とどう向き合っていくかが重要なポイントです。
「別れ」に対して、職員はどのように準備していくべきなのかについて考えていきましょう。
どんな人にも「別れ」は必ず訪れる
どのような人にも「別れ」は必ず訪れ、それは誰にも予期できないタイミングでやってくることもあります。
とくに、看取り介護を必要とする患者さまは、ほとんどの場合長い期間のお付き合いにはなりません。
そのため、気持ちの準備ができる前に亡くなることも当然と言えるでしょう。
看取り介護に携わるなら、別れは必ず来ることを始めから覚悟しておかなければいけません。
自分の感情を発露する
自分の感情を発露する場を持ちましょう。
看取りの現場では、自分がケアした患者さまが亡くなるのを目の当たりにして、悲しみや喪失感を抱いてしまうものです。
しかし、一人の患者さまを見送ったあとも次々と新しい患者さまが来るため、悲しさや喪失感を溜め込んだままでは仕事を続けていくことができません。
悲しい気持ちや辛い気持ちは、言葉にして誰かに話しましょう。
話す相手は誰でもよく、介護の現場を把握している同僚・上司や、気の置けない友人でも構いません。
話を聞いてくれる相手に対して自分の正直な思いを吐露することでも、心のもやもやは消えていきます。
気持ちの整理には時間がかかって当たり前
患者さまが亡くなるのを経験し、すぐに自分の気持ちを整理して次に向かおうとするのではなく、時間がかかって当たり前と割り切ってゆっくり気持ちを消化していくのも大切です。
看取り介護をする方は、その仕事柄どうしても多くの方の最期と触れることになり、介護をしていくうちに気力を消耗していくことは避けられません。
しかし、それを仕事だからと無理に割り切ろうとすると、さらに辛い気持ちを抱えて苦しむことになる場合もあります。
患者さまの死は職員であっても辛いものであり、ショック症状に近い状態や、自分の行いへの反省・後悔を経て、立ち直っていく過程が必要です。
どうしても踏ん切りが付けられず、悲しみをずっと抱えてしまうような場合には、心療内科を受診したり、カウンセリングを受けたりしてみることをおすすめします。
どうしても看取りが辛い場合は…
どうしても看取りが辛くなってしまったら、職場の管理者に相談して、看取り介護の担当から別の仕事の担当に替えてもらうよう相談してみるのも一つの手です。
患者さまの死が辛いという経験は同じ職場で働く者なら誰でも一度は経験したことあるものなので、自身が看取りに対して抱えている感情を正直に述べれば、相談した相手も気持ちを理解してくれるでしょう。
また、転職などで職場を変えたい場合は、以下で解説する方法を使って自分から働きかけるのもおすすめです。
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介護職の看取りについてまとめ
- 看取りならではの考え方・知識を学ぼう
- 業務内容を的確に把握して夜勤の不安をなくそう
- 不安や悲しみを話して1人で悩まないようにしよう
終末期の患者さまが利用する看取り介護の施設では、一般的な介護の現場とは異なり、人が亡くなる様を日常的に目の当たりにすることとなります。
そのため悲しみや喪失感に苦しむこともありますが、焦らずにゆっくり利用者さまが亡くなることを受け入れていけるようにしましょう。
そのためには、悲しみ・喪失感・不安など抱いた感情を外へ出すことが必要です。
業務を記録する・誰かに話すなどして、1人で抱え込み過ぎないようにしましょう。
また、業務での不安をなくすためには、看取りについてよく勉強することが必要です。
たくさんの経験を積んでいけば、自身の経験が次の世代の職員の学びにも繋がっていきます。