介護施設での医者の役割|施設別の医療体制から提供可能な医療行為の種類まで解説

「介護施設の医者ってどのような仕事をするんだろう?」

「医療体制が整った介護施設に入居したい!」

介護施設に入居する場合、医者がどのような対応をしてくれるのかは施設ごとに違います。

そこで、介護施設に勤務する医者はどのような役割をするのかについて、病院に勤務する医者と比較してお伝えします。

介護施設に入居したい方はもちろん、介護施設で働きたい医者の方も参考にしてください。

介護施設の医者の役割についてざっくり説明すると
  • 介護施設の医者は、入居者の健康管理などが主な仕事
  • 特養は介護サービスがメインなので、特養の医者は配置医師と呼ばれる
  • 老健の医者が医療行為を行うことはあまりない
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そもそも介護施設と病院の役割は何が違う?

病院と介護施設

介護施設と病院は、それぞれ大きな役割の違いがあります。勤務先の役割が違うことにより、介護施設勤務の医者と病院勤務の医者も役割が違ってくるのです。

利用する目的が違う

病院は、病気や怪我で入院している患者が、治療や回復ができることを目的として医療サービスを提供します。

そのため、患者が急変したときでも、すぐに対応できるよう、処置室・診療室・手術室などの設備が整っています。

一方、介護施設では、高齢者が中心の要介護者が生活の質を向上させ生き生きと生活できることを目的として、介護サービスを提供しています。

働いているスタッフが違う

病院では、医者や看護師などの医療スタッフがさまざまな診療科で常に働いており、夜勤スタッフもいるため、患者は24時間医療サービスを受けることができます。

そのため、夜中に患者の体調が急変してしまったときでも、夜勤の医者・看護師が対応します。

一方、介護施設の場合、医者や看護師の夜勤や常駐はない施設も多いので、そのような施設で入居者の体調が急変したときには、医者や看護師に電話で介護スタッフが指示を仰ぐこともあります。

訪問者がいるかどうかが違う

病院では、入院患者へのお見舞いのために、患者の友人・知人・家族などが病室に来ます。そのため、病院のスタッフたちはお見舞いで病室に来た人たちとも接することがあります。

一方、介護施設では、入居者以外の人と接するのは、家族が訪問してきたときくらいです。

ただ、デイサービスでは毎日の送迎があるので家族の方とは毎日会います。また、利用者のためにデイサービススタッフと家族が連携することもありますので、デイサービスの場合は家族と接する機会は多いです。

介護施設での医者の役割は?

医者

介護施設での医者は、どのような役割を果たしているのでしょうか。この見出しでは、各介護施設での医者の役割をご紹介します。

特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 介護療養型医療施設
施設の性質 要介護者が質のよい生活を送るための施設 退院した要介護者がリハビリなどを通して在宅復帰ができるように支援する施設 医療ケアが必要な重度の要介護者が長期的に療養をする施設
施設を運営している法人 社会福祉法人 社会福祉法人、医療法人 医療法人
医者の配置 1人(非常勤でもよい) 常勤が1人 常勤が3人
退所者の在所日数・在院日数の平均 1474.9日 329.2日 412日

参考:介護給付分科会資料(平成26年7月23日)

介護施設とは、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設(療養型)の3つを指します。これらは全て介護保険で運営されているものです。

これら3施設の役割や形態の違いにより、それぞれの施設での医者の役割も違ってきます。

なお、介護療養型医療施設は、医療費や介護費などの問題があり、2023年度までに廃止されることが既に決定しました。

介護療養型医療施設の入居者は、医療ケアと介護ケアを両方行うための新設された介護医療院に入居すると見込まれています。

介護老人保健施設(老健)の老健医師

老健は、長期入院をしていたなどの理由で自宅での生活が難しい要介護者が、在宅復帰をするための支援施設です。老健では在宅復帰のためのリハビリがサービスのメインとなります。

そのため、医者の配置は多くが常勤1名です。また、老健は3つの介護施設の中では、リハビリ専門職の配置が義務付けられている唯一の施設です。

老健で勤務する医者の重要な役割は、入居者の状況を把握し、効果的なリハビリが行われるようスタッフに指示を出すことです。また、在宅復帰のための入居者の健康管理も同じく重要な役割となっています。

なお、老健の医者の多くは施設長を兼務しているため、財務管理や人材管理なども行うことがあります。老健の医者が医療行為を行うことはほとんどありません。

医療行為が必要になったときは、医療機関に連絡し、そちらに入居者を搬送します。

その他の役割としては、

  • 看取りに関わること
  • ショートステイ・通所リハビリに来る利用者の対応
  • 入居希望者が入居可か判断する
  • 人材の配置

などがあります。

特別養護老人ホーム(特養)の配置医師

特養は、常に介護を必要とするため自宅で生活するのが難しい要介護者に介護サービスを行う施設です。

特養は介護の要素が強いことから、特養の医者は配置医師と呼ばれています。また、特養は他の介護施設よりも介護職員が多い特徴があります。

配置医師の主な仕事内容は、入居者の定期的な診察で、その他には処方箋の発行、予防接種、入居者の健康管理などです。

その他には、

  • 定期的な診察に基づく健康状態、生活環境、食事、入浴などへのアドバイス
  • ターミナルケアと看取り
  • 入居者が急変したときなどの臨時の診察とその後の処置
  • 医療機関との連絡、家族への説明
  • 主治医意見書の記入

などの業務を行います。

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老人ホームで行われる医療

老人ホームでの医療行為

老人ホームの介護スタッフは、医者の指導のもと一部の医療行為を行うことができますが、行える医療行為には限りがあります。

専門的な医療行為が必要になったときは、介護スタッフがすることはできず、入居者は提携先の病院で医療サービスを受けます。

老人ホームの種類によっても医者の配置基準が異なる場合があるため、この見出しでは老人ホームでの医療行為について説明します。

医療行為を行う老人ホームの種類

専門性が高い医療行為は老人ホームで対応することができません。そのため、入居希望者の抱える病状によっては、入居を断ることもあります。

老人ホームに入居したい場合は、入居したい老人ホームで可能な医療行為について知っておくことが必要です。

一般的に、医療法人が運営する老人ホームは比較的医療サービスが充実しています。

医療行為の範囲の目安としては、厚生労働省の「特別職員配置基準」があります。

これは施設別の医者・看護師の配置義務や、提供できる医療行為の範囲を定めているものです。

入居したい施設を探す際には「特別職員配置基準」は把握しておいた方がよいでしょう。

施設名 医師の配置義務 看護師の配置義務 医療行為
老人保健施設 あり あり 充実している
特別養護老人ホーム あり(非常勤可) あり 施設による
有料老人ホーム なし あり 施設による
グループホーム なし なし(任意) 充実していない

老人ホームで行える医療の種類

老人ホームでは、介護スタッフと看護職員が行える医療行為にも違いがあります。

この見出しでは、介護スタッフと看護職員ができる医療行為の種類、老人ホームで提供可能な医療行為の種類を紹介します。

介護スタッフが提供可能な医療

介護スタッフができる医療行為は、簡単にでき、専門的スキルがいらないものです。

例えば、

  • 体温測定
  • 絆創膏を貼る
  • 湿布を貼る
  • 座薬を入れる
  • 褥瘡の処置以外で軟膏を塗る
  • 目薬を差す
  • 薬を飲む介助
  • 自動血圧計での血圧測定

などです。

看護職員が提供可能な医療

看護職員ができる医療行為は、専門的な医療行為には属さない一部の医療ケアです。

  • 痰の吸引
  • インシュリン注射
  • 褥瘡の処置
  • 胃ろうのケア
  • 人工呼吸器の管理
  • 在宅酸素療法の方の体調管理、ボンベの交換・補充

このような業務を行います。

医療機関と連携して治療を行う

老人ホームだけではできる医療行為に限界があり、高度な医療が必要になった場合は、提携先の医療機関で治療をします。そのため、有料老人ホームでは医療機関との連携が必須です。

医療機関で行われる医療行為

有料老人ホームの協力医療機関では、医療サービス以外にも、定期健診や健康相談などの業務もしています。

医療機関の中には、提携先の有料老人ホームの入居者の救急対応が可能なところや、入居者の医療行為が必要な場合、優先的に入院できるところがあります。

老人ホームを選ぶときには、協力医療機関にも注目し、万が一のときどのような医療行為が可能なのか把握しておきましょう。

専門的な医療行為は、内科・整形外科・脳神経外科などが中心になっていますが、それ以外の診療科でもさまざまな医療サービスが受けられます。

入院時の老人ホームの医療体制

入居者が入院することになった場合、老人ホームの協力医療機関に入院することができます。

また、入院中の日用品については老人ホームからのサポートを受けられます。

ただ、退院後も老人ホームで暮らしたい場合は、ほとんどの場合、入院中も利用料の一部を支払い続ける必要がある点には注意が必要です

なお、退院後に引き続き老人ホームで暮らしたい場合でも、老人ホームで対応できない医療行為が必要であれば、老人ホームを退去し、必要な医療行為ができる施設へ入り直さなければなりません。

老人ホームの看取り

看取りはどの施設でもできるわけではなく、看取りをするための体制が整っていることが必須です。

例えば、看取りをホームで行うか、急変時には医療機関に搬送するかなど、看取りの際に必要な項目を本人・家族と施設の医者・看護師・介護スタッフなどで話し合い、本人と家族の同意をもらいます。

また、死亡確認をするための医者がいることや、ホームで看取りをする場合には個室を確保することなども必要です。

このように看取りができる老人ホームでは、本人と家族が施設側と話し合い、看取りをするためのさまざまな希望や施設側の対応などを確認し、看取りケアを行います。

しかし、老人ホームでは体制が整っていないとして、看取りができないところも少なくありません。

看取り介護についてはこちらの記事でも紹介しています。

看取り介護とは?「看取る」の定義や終末期医療との違い・介護施設でのケアまで解説

介護施設の医者の役割についてまとめ

介護施設の医者の役割についてまとめ
  • 介護スタッフは専門的な医療行為はできない
  • 専門的な医療行為が必要なときは、提携先の医療機関で行う
  • 看取りができる介護施設はまだ少ない

介護施設はそれぞれ入居する目的が異なるので、そこで働く医者の役割も異なります。

また、医療行為についても施設のスタッフができることは限られており、専門的な医療行為は提携先の病院で行います。

介護施設を選ぶときには、その施設での医者の役割や、できる医療行為の範囲、緊急時にどのような対応をするかなどを綿密に調べることをおすすめします。

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