【専門家監修】認知症の方向けのレクリエーション|効果や注意点・おすすめレクも紹介

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長

矢野 大仁 先生

「認知症の方向けのレクリエーションってどんなもの?」

「効果や注意点は?具体的にはどんなレクリエーションがおすすめ?」

などと疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

認知症高齢者の方にとって、レクリエーションは様々な好影響のある重要な活動です。

今回は認知症の方向けのレクリエーションについて、効果や注意点、おすすめの方法などを解説します。認知症について興味を持たれている方は、ぜひこの機会にレクリエーションについて知ってみましょう。

認知症向けのレクリエーションについてざっくり説明すると
  • 目的は第一に楽しんでもらうこと
  • 不安などを和らげ、自信を取り戻す効果が
  • シンプルなものを少人数で短時間ずつ

認知症の方向けのレクリエーションの目的

高齢者の方一般向けのレクリエーションの目的としては、主に以下の3点が挙げられます。

  1. 五感の刺激などによる脳機能の活性化
  2. 体を動かしての運動機能の向上
  3. 他者とのコミュニケーションによる精神的な好影響

認知症の方の場合、1と2の目的はもちろんですが、より重視されるべきは3です。認知症の方向けのレクリエーションは、「居場所を持ってもらう」、「幸せな気分に浸ってもらう」、「楽しいと感じてもらう」といった精神面の効果を第一の目的に行われます。

なお、その達成のためには1と2の目的はあまり重んじないほうが良い場合もあります。

機能回復を狙った1と2のレクリエーションで頑張りすぎてしまうと、認知症の方は「できない」ということに強いストレスや不安を感じてしまうことがあるからです。それではレクリエーションを楽しむことができず、精神的な好影響は生まれません。

達成に向けて集中力を発揮しなければならないゲームや、記憶力を要する脳トレなどでは認知症の方には不向きだと言えます。

認知症の方にとっては、「楽しい・気持ちいい・嬉しい」といった感情を触発できるようなプログラムで、それぞれの方が安心して楽しめる居場所を作っていくのが望ましいです。

認知症の方向けのレクリエーションの特徴

認知症高齢者の方向けのレクリエーションには、主に以下のような特徴があります。

自分のこれまでの生活や特技を生かせる

これまでの暮らしで培った経験や得意なことを生かせるようなレクリエーションが、認知症の方にとっては理想的だと言えます。そうしたレクリエーションは、自信を高めることにつながるからです。

また活動を通して、昔あったことを思い出したり、かつての特技を今でもできると再認識したりすることもできます。そのように、自分が身につけてきた経験や能力を肯定できる活動は、認知症の方にとって非常に大切です。

一方で過去の人生で経験しなかったような変わった内容のレクは、認知症の方には不向きだと言えます。

個人の興味に合わせた活動にする

認知症の方は、周囲の刺激に敏感で、脳が疲れやすい傾向にあるので、ご本人の負担にならないようなレクリエーションを考えることも大切です。

興味のない活動を強制するのではなく、ご本人が心から楽しめるようなそれぞれの興味に合わせた内容にするのが良いと言えます。

興味を示さないことや苦手なことをするのは、特に認知症の方には過度なストレスになるので、ご本人が嫌がっているときには内容を変更するのが良いでしょう。

時間設定は厳しすぎないように

興味のある楽しい活動であっても、長時間やり続けていると脳の疲れにつながってしまいます。特に認知症の方の脳は疲れやすいので、適宜休憩を設けるのが良いでしょう。

しかしながら、集中しているときにそれを断絶するように休憩をいれるのは逆効果だと言えます。かえってご本人に大きなストレスを与えることにもなりかねません。

よってご本人が休もうと思った時に休めるような自由度のあるタイムスケジュールにするのが良いと言えます。

自信の持てる適切な難易度

認知症の方のレクリエーションを考える上で、難易度の設定は非常に重要です。ご本人の自信につながるような適当な難易度を設定しなければなりません。

例えば、あまりにも簡単すぎる内容では、ご本人が「子供扱いされている」、「馬鹿にされている」というように感じてしまうことがあります。

特に認知症の方は、過度に能力を低く見られるという偏見・差別を経験している場合もあり、普通の方よりもそうした感覚は鋭敏です。よって難易度を低くしすぎないことには、より気をつけなければなりません。

また難易度を高くしすぎても、できないことで自信を失くしてしまう場合があるので、こちらにも気をつける必要があります。

交流やつながりを持てる物にする

社会的つながりは、認知機能と精神衛生にポジティブに関係すると言われています。一方で孤独感は認知機能の健康にネガティブな影響を与えるそうです。

そのため、認知症の方向けのレクリエーションでも、人との交流やつながりを重視すべきだと言えます。

ただし、認知症の方は、一般の方と同じようにそれらができるわけではありません。人の顔が覚えにくくなったり、会話が難しくなったりすることもあります。

よってレクリエーションは、そうした症状がある場合でも、楽しんで参加でき、交流やつながりを実現できるような内容にしなければなりません。

成果が出たり記録に残る物がおすすめ

認知症の方にとって、記憶障害によって思い出やできたことを忘れてしまうのは非常に辛い体験です。そのため、レクリエーションは、その辛さを少しでも緩和できるような内容にすることが重要だと言えます。

例えば、成果や記録を残せるようなレクリエーションが適切です。具体的には、素敵な作品を制作したり、活動を楽しむ様子を写真や動画に記録したりすれば、後から振り返れるので良いでしょう。

そうした成果や記録は、ご本人の人生の証であり、他者と共有できる記憶でもあるため、特に認知症の方にとっては重要です。

介護のレクリエーションは3種類

介護現場で用いられる一般のレクリエーションは、主に以下の3種類に分類できます。

個別レクリエーション(一人遊び)

個別レクリエーション(一人遊び)は、個人ないしは少人数で行うレクリエーションです。それぞれの好みや興味に合わせて、ゲームや囲碁・将棋、手芸などを行います。

個別レクリエーション(一人遊び)は、集団レクリエーションが楽しめない方や他の人とコミュニケーションを取るのが苦手な方でも楽しむことが可能です。また認知症の進行により、集団でのレクに参加することが難しくなった場合に、一人遊びを行うということもあります。

集団レクリエーション

集団レクリエーションは、大人数で行うレクリエーションです。グループでゲームや体操を行ったり、歌を歌ったりします。

他の人とコミュニケーションをとりながら楽しめるレクリエーションです。他の人と関わることで、新たな生きがいや目標が生まれることもあります。

なお、集団レクリエーションは、さらに以下の5種類に分類することが可能です。

  • 体を動かすレクリエーション
  • 頭を使ったレクリエーション
  • 音楽レクリエーション
  • 創作レクリエーション
  • 外出レクリエーション

基礎生活レクリエーション

基礎生活レクレーションは、食事や入浴など、日常生活の活動の中で心地良さや楽しさを見出していくレクリエーションです。

例えば、食事のときに好きな音楽を流したり、居室に絵画やお花を飾ったりといったことが行われます。基礎生活レクリエーションは、それぞれのQOLを高めるのに有効です。

レクリエーションの時間を設けずに日々の暮らしの中で実施できるので、例えば、レクに興味を示してもらえない場合や認知症の影響で一人遊びも難しい場合などに役立つでしょう。

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レクリエーションの主な効果

認知症高齢者の方は、自分自身の症状について不安や絶望を感じていることが多いと言われています。また認知症の症状によってできないことが増えることで、自信を喪失してしまう場合もあります。

レクリエーションは、そうした否定的な感情を緩和し、自信を取り戻してもらう上で有効です。ご本人が、自分にはまだまだ能力があり、これから新しい楽しみを見つけていけるのだと自覚する良いきっかけになります。

また一般向けに行われる「訓練」や「トレーニング」は、認知症の方にはあまり向いていません。特に無力さを感じたり、自信を失ったりしている状態の場合、そうした能力を試すような活動は、ご本人の存在を否定してしまうかもしれず、荷が重いと言えます。

一方でレクリエーションであれば、認知症の方でも遊び感覚で気軽に取り組むことが可能です。

人間関係の構築にも有効

認知症の方は、「認知症の症状を知られたなくない」、「周りに迷惑をかけたくない」、「こんな自分を受け入れてもらえるか不安だ」といった思いから、他者とのつながりを絶ってしまいがちです。

地域社会に参加しなくなったり、仕事ができなくなったりして、人との交流がなくなり、孤独になってしまうことが多々あります。

認知症の方向けのレクリエーションは、そのように失われた人間関係を再び構築する上でも有効です。レクリエーションを実施すれば、楽しみながら自然に人との交流やつながりを増やしていくことができます

認知症の方におすすめのレク8選

認知症レクリエーション

以下では認知症の方におすすめのレクリエーションを8種類紹介します。

回想法

認知症の方は、遠い昔のことに関してはよく覚えている傾向にあります。回想法は、写真や音楽などを手がかりとして活用し、昔のことを思い出していくというレクリエーションです。

このレクリエーションは記憶を呼び覚ますだけでなく、同世代の人々と思い出を共有したり、思い出を年下の世代に伝えたりすることで、他者とのつながりやきずなを取り戻すきっかけにもなります。

ちなみに回想法は、アメリカの精神科医であるロバート・バトラーが1960年代に提唱した古典的な方法です。

回想法については以下のページで詳しく解説しています。

回想法とは|認知症に対するリハビリ効果や注意点・実践方法についても解説

簡単な体操や運動

認知症の方は、腰痛や便秘といった運動不足に起因する身体的不調を抱えていることが多いです。よって筋肉の凝りの解消や血流の改善などにつながる簡単な体操・運動が役に立ちます。

身体を動かすことは心にも好影響をもたらすので、体操や運動は一石二鳥の有用なレクリエーションだと言えるでしょう。

最も手軽な運動は「ウォーキング」

運動の中で最も手軽で簡単なのは「ウォーキング」です。特に裸足で歩けば、脳の血流が促進されるだけでなく、より多くの刺激を得ることができます。

認知症の方は体を動かす機会が少なくなりがちなので、レクリエーションの一環として散歩を取り入れるのがおすすめです。手軽に脳の活性化や身体機能の低下防止に働きかけられます。

またウォーキングの際には、家族や介護施設の職員が同伴し、会話をしながら歩くと脳により多くの刺激を与えることが可能です。

歩くことと話すことでは、活性する脳の領域が異なるため、それらを同時に行うことで、脳全体により大きな刺激を与えられます。

絵や俳句などのアート

絵や俳句、ダンスなど、アートも認知症の方におすすめのレクリエーションです。脳に刺激を与えることで、認知症の症状が改善されると注目されています。

ちなみにアートがレクリエーションとして実施されるようになったのは、イギリスに端を発します。

病によって精神的にも衰弱していた画家が、医者に内緒で創作活動を再開したところ、症状に改善が見られたことから、創作活動がレクリエーションとして注目されるようになったそうです。

また当初は身体面の効果を狙って行われていましたが、段々と精神面の好影響にも注目がなされるようになり、統合失調症や認知症へのアプローチとしても定着していったと言います。

手芸や工芸・折り紙などの手作業

上述のアートと似ていますが、手芸や編み物、工芸、折り紙などの手作業も、認知症の方に向いているレクリエーションです。多くの介護施設で、レクリエーションの時間を使ってそうしたハンドメイド作品の製作が行われています。

手遊びも有効なレクリエーション

脳を活性するのような手遊びも、認知症の方へのレクリエーションとして有効です。

具体的には、「後出しじゃんけん」にちなんだ手遊びが挙げられます。介護施設でこれをする場合、まずスタッフが「グー・チョキ・パー」いずれかの手を出します。その手を見て、認知症の方が「あいこ」になるように手を出すという遊びです。

難易度が低すぎたり、飽きてきたりした場合は、「勝つ」手や「負ける」手を出してもらうなど、バリエーションをつけると良いでしょう。

そろばん

高齢者の方には、子供の頃や壮年の頃にそろばんを扱ってきたという方も多いので、そろばんのレクリエーションの良い道具になります。

計算の作業が脳の刺激になることはもちろん、手指の細かい動きも脳の活性に効果的なので、脳を刺激するという観点において、そろばんは非常に良いレクリエーションです。

また経理などの仕事で毎日のようにそろばんを扱ってきた方にとっては、過去の特技や経験を呼び覚ますという点でも良いと言えます。

さらにそろばんが周囲に教えられるほど得意な場合は、指導役としてレクリエーションに参加してもらえば、つながりや交流の良い機会にもなるでしょう。

歌や音楽活動(合唱など)

音楽はストレス解消はもちろん、認知症にも好影響を与えると言われており、多くの介護施設でレクリエーションの一環として音楽療法が実施されています。

音楽療法の中でも特に効果的なのが、積極的・能動的な方法です。具体的には「流行歌を歌う」、「合唱する」、「タンバリンやカスタネットなどの楽器を演奏する」といった方法が挙げられます。

カラオケ大会で「懐メロ」を歌ったり聴いたりすれば、過去のことを思い返すという意味で脳への刺激にもなります。

また「幸せなら手をたたこう」などの曲に合わせて手を叩いたり、グー・チョキー・パーのように指先を動かしたりしても楽しいです。こうした手遊びを加えた音楽療法でも、脳へ刺激を与えることができます。

「聴く」だけでも十分に効果がある

「歌う」、「演奏する」といった能動的な方法が難しければ、「聴く」だけでも構いません。例えば、利用者の方から好きな歌・曲を募って音楽鑑賞会を開くと良いでしょう。

音楽を聴いてリラックスしたり、感想や思い出を語り合うことで交流やつながりが作れたりと、色々なメリットがあります。

また手遊びを加えた音楽療法にも同じことが言えますが、「聴く」音楽療法は、言語障害がある方でも楽しめるという点で魅力的です。

なお、音楽療法には認知症の症状を予防・改善する効果があることに加え、笑顔が多くなる、食欲が増進するといった好影響も確認されています。

動物や植物の世話

認知症の方にとっては、動物や植物の世話をすることも良いレクリエーションです。

動物の場合、例えば、犬や猫などの「毛が生えた動物」が良いでしょう。毛の生えた動物をなでることが、神経に良い刺激を与え、認知症の予防につながると言われています。

ただし、大型犬など、犬種によっては世話をしにくい場合があるので、ダックスフンドやトイプードルなど、飼いやすい小型犬を選ぶのがおすすめです。散歩の必要がなく、なおかつ大人しいスコティッシュフォールドやアメリカン・ショートヘアなどの猫にも人気があります。

また植物の場合、美しい花を愛でたり、土の匂いを嗅いだり、作った野菜を食べるといったことが、五感の良い刺激になります。

さらに動植物とともに、世話をすることで「愛する」、「愛される」ことを経験でき、自尊心の向上など、精神的な効果も期待できるでしょう。

料理などの家事

家事を行うことも認知症の方には良いレクリエーションになります。なかでも料理はおすすめです。

調理の過程で、栄養バランスを考えたり、作業の順番を工夫したりと頭を使うことが、脳に良い刺激を与えてくれます。また料理の経験がある人であれば、料理にまつわる思い出を呼び起こすことにもつながります。

さらに季節の移り変わりや旬を感じられたり、味覚や嗅覚をはじめとする五感に刺激を与えられたりすることも魅力的です。

なお、料理だけでなく、配膳や食器洗い、洗濯、掃除などの家事が、レクリエーションの一環として取り入れられることもあります。家事を担うことで、自分の役割や必要性を実感し、それが自信につながることもあるでしょう。

レクリエーションを行う際の注意点

以下では、認知症の方向けにレクリエーションを実施する際の注意点を紹介します。

要介護度が同じレベルの少ない人数で行う

認知症では、どれだけ進行しているかで症状の現れ方が異なります。よってレクリエーションを行う場合は、要介護度でグループ分けをすることをおすすめです。

症状が似ていればレクの内容や難易度も考えやすく、様々な対応もしやすいと言えます。

また認知症の方は、新しく出会った人のことを覚えたり、目まぐるしい変化に対応したりするのが苦手です。そのため、グループは少人数にしましょう

刺激や変化が多すぎる環境でレクリエーションを行えば、かえって症状を悪化させてしまうことも考えられるので気をつけてください。

簡素なメニューで実施する

上述の通り、内容の難易度が高すぎると、「できない」ことが認知症の方に悪影響を与える可能性があります。そのため、メニューやルールは、できるだけシンプルでわかりやすいものにすることを心がけましょう。

認知症の方は複雑な規則や動きを理解するのが難しいと言われているので、ややこしいものにならないように気をつけるべきです。

上述でも紹介しましたが、シンプルでわかりやすいという観点では、例えば「そろばん」や「折り紙」などが良いでしょう。

毎度同じメンバーで行う

繰り返しになりますが、認知症の方は新しく出会った人のことを認識するのが苦手です。一方で日常的に接している馴染みの人と話すことは十分にでき、心がリラックスしやすい傾向にあります。

そのため、レクリエーションを行う少人数のグループは、毎回メンバーを固定するのがおすすめです。常に顔馴染みの人たちと参加してもらうことで、参加者同士のコミュニケーションもはかどり、レクが成功しやすくなります。

15分までの短時間で区切ってみる

いかに素晴らしい内容のレクリエーションでも、長時間続けることはよくありません。長く続けすぎると集中力が切れてしまったり、苦痛やストレスを感じてしまったりする恐れがあります。

特に認知症の方は、精神的な疲労やストレスによって、心理的に不安定になることがあるので、無理に続けることは禁物です。

疲れている様子やイライラが少しでも感じられたら、レクリエーションの内容を変更したり、休憩にしたりするのが良いでしょう。

なお、人間が深く集中できるのは15分が限界と言われることから、レクリエーションは15分単位で行うのがおすすめです。15分経ったら一度休憩を入れ、その後同じものを再開したり、内容を変えたりしましょう。

参加者の過去や背景を理解する

認知症向けのレクリエーションは、ご本人が歩んできた過去や背景を理解することで、改善効果がより高まると言われています。過去や背景とは、具体的にはご本人が生きてきた時代や出身地・居住地の特徴などです。

そうした要素を盛り込んだ内容にすることで、レクリエーションはより良いものになります。例えば、青春時代に流行った懐メロを鑑賞したり、方言や風習に関するクイズ大会を開催したりといった方法が挙げられます。

なお、上記のことを考えると、同じ要介護度の中でさらなるグループ分けが必要な場合は、年齢や出身地でくくるのが良いと言えるでしょう。

レクリエーション介護士への相談も

「レクリエーション介護士」は、介護レクリエーションの企画・提案・実施を担う専門家に与えられる、民間資格です。介護レクリエーションの基礎知識・基礎技術を習得したいというニーズの高まりから、2014年より、日本アクティブコミュニティ協会が運営しています。

認知症の方向けのレクリエーションで困った時は、この「レクリエーション介護士」の資格を持った方に相談するのもおすすめです。

自分が「レクリエーション介護士」を取得しても良い

「レクリエーション介護士」の2級は、年齢や職務経験を問わず、誰でも取得することができます。専門学校や通信講座で認定講座を受け、その後の筆記試験をパスすることで取れます。

また2級を取得すれば、1級の受験資格を得ることが可能です。

職場や就職・転職の場でのアピールにもなりますし、何より認知症の方々の生活を向上させることにつながる資格なので、機会があればぜひ積極的に挑戦してみてください。

レクリエーションで起こるトラブル別対応法

レクリエーションの際に起こるトラブルの対処方法については、以下を参考にしてください。

レクの道具を口に入れようとする場合

認知症が進行すると、食べ物とそうでないものの区別がつかなくなってしまったり、脳の異常で食欲の抑制ができなくなったりして、「異食行動」が現れる場合があります。

異食行動とは、食べ物でないものを誤って口に運んでしまうことです。レクリエーションの最中にもこの異食行動が見られる可能性があるので注意してください。

レクリエーションで使う道具を口に入れようとした場合は、まず「今はやめましょうね」などとやさしく言って止めるのがおすすめです。また道具の使い方を改めてわかりやすく実演することにも効果があります。

なお、道具を口に入れてしまった場合、その口に手をやると噛まれてしまう恐れがあるので注意しましょう。

大声を出してしまう場合

感情のコントロールが難しくなり、大声で怒鳴ってしまうような場合、対処法として挙げられるのは、「人的ないしは物的環境を変えること」です。

例えば、ご本人の気持ちが落ち着くまで、他のスタッフに一旦その場から連れ出してもらうなどが良いでしょう。

また話をよく聞いてあげたり、一旦休憩を入れてその後にレクリエーションの内容を変えるといったことも、場合によっては有効です。

なお、仲間はずれや後回しにしたり、無視したりすれば、不安定な感情を助長させてしまう恐れがあるので注意してください。

作業中に別の話を始めてしまう場合

レクリエーションの最中に、認知症の方が内容と関係のない話を始めてしまった場合、まずはその話を聞きましょう。そして、上手にレクリエーションへと本人の注意を向けてやるように誘導してください。

決して「関係のない話をしないでください」や「その話は前に聞きました」など、相手を否定するようなことは言ってはなりません。また相手の話を遮ることも避けましょう。

そもそも認知症の方が関係のない話をしてしまうのは、記憶力や社会的認知の能力が低下しているから、つまりは病気のせいだと言えます。ご本人がわざとそうしているわけではないので、対応の仕方によってご本人を傷つけてしまうことになります

そのため、言葉や態度には十分に気をつけてください。

重度認知症の方向けのレクリエーション

レクリエーションの本質は、ご本人に楽しさや感動を味わってもらうことです。そのため、参加者を集めて行うイベント型のレクリエーションでなくても構いません

ご本人が楽しめる内容でさえあれば、立派なレクリエーションだと言えるので、それぞれに合わせて柔軟に内容を変化させることも大切だと言えます。

例えば、重度の認知症高齢者の方であれば、部屋に季節の花を飾ったり、壁に綺麗な絵や写真をかけたりするだけでも良いわけです。美しい写真が載ったカレンダーを配置すれば、感動だけでなく季節感も得られて一石二鳥でしょう。

また時間がある時にスタッフがやさしく声かけし、手を握ったり体をさすったりすることも、素敵なレクリエーションの一つです。

自力でできることは少なくなっても、美しいものを感受したり、感動したりといった力は存続するので、そこを活かせるようなことを考えるのが良いでしょう。

個別対応型のレクリエーションもおすすめ

認知症の進行によって認知機能が著しく低下してしまうと、グループ型のレクリエーションに参加できなくなる場合も多いです。

その場合、集団でのレクリエーションではなく、個別対応型のレクリエーションを考えるのが良いでしょう。

個別対応型のレクリエーションでは、ご本人のこれまでの人生について調べ、それを内容に反映させるのがおすすめです。生まれ故郷や長年携わってきた職業、打ち込んだ趣味などの要素を盛り込んでみましょう

また時間にゆとりを持たせることも大切です。ゆっくりとした時間の中で、じっくり自分の過去を振り返ってもらうことが、個別対応型レクの中核だと言えます。

具体的にはご本人に人生経験を語ってもらったり、思い出のアルバムを一緒に見たりするのが良いでしょう。

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認知症向けのレクリエーションまとめ

認知症向けのレクリエーションまとめ
  • 主な目的は精神的な効果
  • 人間関係の構築にも有効
  • 回想法や散歩、音楽など様々な方法が
  • 本人が楽しめることが一番

認知症の方向けのレクリエーションについて詳しく解説しました。

認知症の方を対象にしたレクリエーションの目的は第一に精神的な効果、要するにご本人に楽しんでもらい、自信をつけてもらうことです。

方法としては回想法やウォーキング、音楽、手芸など、様々な方法があります。ただし、本質はご本人が楽しめること、感動できることなので、これを満たせるのならあまり形式にこだわる必要はありません。

症状が重い場合は、部屋を綺麗に飾りつけたり、楽しく会話をしたりするだけでも立派なレクになります。

以上を認知症の方向けのレクリエーションを考える上での参考にしてください。

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
中部療護センター長
岐阜大学連携大学院脳病態解析学分野 教授(客員)

矢野 大仁(やの ひろひと) 先生

1990年岐阜大学医学部卒業、医学博士。大雄会病院などの勤務を経て、学位取得後、2000年から岐阜大学医学部附属病院脳神経外科助手。2010年 准教授、2013年 臨床教授・准教授、2020年4月 中部療護センター入職、2024年4月から現職。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医。脳卒中の他、脳腫瘍、機能的脳神経外科など幅広い診療を行っている。患者さんが理解し納得できるようにわかりやすい説明を心がけている。

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