認知症サポーターとは?介護における役割や活動例・オレンジリングの意味も解説
更新日時 2023/10/10
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「認知症サポーターってどんなことをする人?」
「認知症サポーターになりたいんだけど、どうすればいい?」
高齢化社会が進んでいる現在、認知症の方への支援の重要性も高まっています。
そんな中、重要な役割を果たしているのが認知症サポーターです。
この記事では、認知症サポーターとはどのような役割を果たしているのか解説します。
認知症の方への対応の仕方や、認知症サポーターになる方法を知りたい方はぜひ参考にしてみてください!
- 認知症サポーターとは地域の認知症の方やご家族をできる範囲で手助けする人
- 認知症サポーターの証としてオレンジリングなどがもらえる
- 認知症サポーター養成講座を受けると認知症サポーターになれる
認知症サポーターとは
認知症サポーターとは、以下のような人のことを指します。
認知症サポーターは何か特別なことをする人ではありません。 認知症について正しく理解し、偏見を持たず、認知症の人や家族を温かい目で見守る「応援者」です。 その上で、自分のできる範囲でサポーターとして活動しています。認知症サポーター養成講座で得た知識を生かし、近所で気になることがあればさりげなく見守る、まちなかで困っている人がいたら手助けすることも立派な活動の一つです。
出典:特定非営利活動法人 地域共生政策自治体連携機構
「認知症サポーター」は資格ではありません。また、明確な使命があるわけでもありません。日々の生活の中で、認知症の方を助けていくのが役目です。
認知症サポーター養成講座を受講すると、認知症サポーターになることができます。また、認知症サポーターになると、認知症サポーターカードとオレンジリングがもらえます。
日本の認知症サポーターの人数
全国キャラバン・メイト連絡協議会では、各自治体や企業などと協力し、認知症サポーターを育成しています。
この取組は平成17年度に約30,000人からスタートし、令和5年6月には上のグラフのように14,645,915人にまでなっています。
男女比は、女性が60%、男性が40%です。年齢的には、10代以下が一番多く400万人を超えています。次に多いのが70代以上と60代です。
認知症サポーターの歴史
2005年に厚生労働省が開始した「認知症を知り地域をつくるキャンペーン」は別名 「認知症サポーターキャラバン」 とされており、認知症への偏見をなくすため認知症サポーターの育成をする事業を行っています。
2013年には、G8(イギリス・アメリカ・フランス・ドイツ・カナダ・イタリア・ロシア・日本)による認知症サミットがありました。
2014年には、「認知症サミット」の後継イベントとして、独立行政法人国立長寿医療研究センター、厚生労働省などが 「認知症サミット日本後継イベント ~新しいケアと呼ぼうのモデル~」 というイベントを開催しています。
2015年には、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン) により、さらに認知症サポーターの養成が促進されるようになりました。
新オレンジプランとは、認知症との「共生」そして「予防」 を一層強化していく方針のことです。
認知症対応可能な介護施設はこちら!認知症サポーターの5つの役割
認知症サポーターには5つの役割があります。
認知症に対して正しく理解し、偏見を持たない
日本では、現在認知症への偏見があると言わざるを得ません。実際に、認知症の方の家族の大きな悩みとして、認知症に対する誤解や偏見があります。
そのような誤解や偏見を持っている人を見つけた場合、認知症サポーター養成講座をおすすめするのも認知症サポーターとしてできることです。
認知症サポーターになり認知症についてしっかり理解することにより、認知症患者の助けになるだけではなく、認知症サポーター本人が認知症になったときも、受け入れやすくなります。
偏見のない理解は、認知症サポーターが認知症患者やその家族に寄り添い、彼らが尊重され、社会参加が促進される環境を築く上で不可欠な要素となります。
認知症の人や家族に対して温かい目で見守る
認知症の方は、外出先での失敗などがきっかけで家に閉じこもりがちになることがあります。また、ご家族も、世間の目が気になってストレスとなり、認知症のご家族との外出を避けてしまうようになることもあるのです。
しかし、認知症サポーターが認知症の方やその家族を優しく見守っていけば、認知症の方やご家族は外出時にストレスを感じることなく、行動を制限されることもなくなります。
認知症の方が外出先でお困りの場合、認知症サポーターがそっと手助けするだけでも、認知症の方やご家族は外出での辛い気持ちが和らぐでしょう。
近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する
認知症の方に対しては、一人ひとりが自分なりにできることを少しでも行っていくことにより、認知症の方をご家族だけではなく周囲の人々も支えていくことができます。
「認知症の方を支えるためには、専門的な技術が必要なのでは」と心配な方もいるかもしれません。
しかし、認知症と思われる方が道を歩いており、危ないのではと感じたら*一緒に歩いてあげることも十分支援になります。
特別に難しいことをしなければならないわけではなく、自分ができる範囲で見守ったり手伝ったりすることが認知症を支える社会を作ります。
地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる
認知症の方に対しては、自分ができる範囲のことをすればよく、専門家が入った方がよいと思われる状況に無理して対応する必要はありません。
その場合は、認知症の方のご家族に地域包括支援センターなど地域の認知症の方を支援をしている施設を教えることでも認知症支援になります。認知症の方に対しては、地域単位で支援していくことが大切だからです。
地域包括支援センターなどが支援することに加え、認知症サポーターが増えれば、認知症に対する正しい知識を持った人が地域にたくさん増えることになり、地域ぐるみで助け合うことが可能になります。
街づくりを担う地域のリーダーとして活躍する
認知症サポーターが中心となって地域の認知症に対する情報を積極的に発信したり助けたりすることによって、認知症でも生活しやすい社会を作っていくことが重要です。
また、認知症の方が過ごしやすい社会とは、子供や外国人など、社会で生活していく中で困りごとが多い人たちにも優しい社会です。
認知症サポーターになることにより、あらゆる人がより生きやすい社会づくりに参加できます。
認知症サポーターのしるしであるオレンジリングを身に付けて人が集まるところに行けば、同じ認知症サポーターと出会うことができ、よりよい地域・社会づくりのために語り合えるかもしれません。
職場や地域の集まりなどにオレンジリングを身に付けていくことをおすすめします。
認知症サポーターの様々な活動の例
ここからは、認知症サポーターはどのような活動ができるのか、具体例をご紹介します。
ゴミ出しのとき
ゴミ出しで認知症の方に気付ける場合があります。例えば、ゴミの日ではないのにゴミを出していたり、燃えるゴミと燃えないゴミの分別をしていなかったりするのは、認知症の症状による可能性があります。
この場合イライラしながら「ゴミの日は明日ですよ!」などと注意すると、相手の方は傷付いてしまいます。「明日一緒にゴミを出しましょう」など、優しい声がけを心がけましょう。
悪徳商法に遭っているとき
相手が認知症の方とわかっていながら、押し売りをしたり契約書にサインをさせたりする悪徳業者がいます。
ご近所の高齢者の方が 「健康食品の年間契約をした」「布団をたくさん買った」 など気になることを言っていたら、悪徳商法に騙されていないかチェックしてあげてください。
もし怪しいと思ったらご家族やご親族に連絡できればすぐに連絡しましょう。 連絡できる人がいない場合には契約内容を確認し「消費者ホットライン電話番号:188)に電話してください。
最近お店に来ないとき
常連の高齢者の方が最近お店に来なくなったときも、念のため認知症を疑ってみてください。
特に一人暮らしの認知症の方は、生活をしていて困ったことがあっても助けを求めることができない場合があります。
お店に来られないのは、何らかの困ったことが起きたからである可能性もあります。
地域の民生委員や自治会長に相談し、その方が今どのような状態なのか、地域の事情に詳しい方と情報共有するようにしてみてください。
サークルの友人に異変を感じたとき
サークル活動を共にしていた友人が、活動日にサークルに来なくなったり、サークルの決め事を守らなくなったりするときも、認知症である可能性があります。
一見するとわがままになっていると思いイライラしがちですが、認知症である可能性を考えて「一緒にサークルに行きましょう」などと優しく声がけしてみてください。
また、サークル活動中の様子を見てご家族や病院に相談することにより、認知症と診断できることもあります。
認知症サポーターは友人に対して、気づかれずに配慮をし、適切な支援を提供することで、友情を維持しながら認知症患者の生活に貢献することができます。
道に迷っているとき
道をうろうろしている高齢者の方がいたら、認知症を疑って手助けをしてみてください。
このような方は、認知症による見当識障害という症状で、自分がどこへ行こうとしているのかわからなくなっている可能性があります。
まずはご本人に「一緒にお茶を飲みませんか?」などと声をかけてその方がどこにも行かないようにしたあと、110番をして警察に保護を頼みましょう。
認知症サポーターキャラバン表彰・報告会
認知症サポーターキャラバンでは、年に一回認知症サポーターが全国から集まります。
そして、講座開催回数が上位のキャラバン・メイトや、認知症サポーター養成状況が優良な自治体や団体への表彰、キッズサポーターによる作文発表や劇などが行われます。
また、特に認知症サポーターとして認知症の啓発に貢献した団体や自治体を特別啓発事例として紹介し、事例を共有しています。
認知症サポーターになるには
ここからは、認知症サポーターになる方法をご紹介します。
認知症サポートキャラバン
認知症サポーターキャラバンとは、認知症サポーター及び、認知症サポーターを養成するキャラバン・メイトを養成する組織です。
キャラバン・メイトになるには、自治体と全国キャラバン・メイト連絡協議会が主催しているキャラバン・メイト講座研修を受けるか、企業・団体と全国キャラバン・メイト連絡協議会が主催しているキャラバン・メイト養成研修を受けます。
キャラバン・メイトとして認められたら、地域住民、学校、企業の従業員に認知症サポーター養成講座が開催できます。
認知症サポーター養成講座
認知症サポーターになるには、認知症サポーター養成講座を受けることが必要です。主催は自治体および全国の職域団体などで、講師は先に述べたキャラバン・メイトが努めます。
講座の時間は90分で、原則的に受講料は無料です。また、受講資格もありません。講座終了後は、認証サポーターカードとオレンジリングがもらえます。
働きながら取得したい人のための出前講座も
働きながら認知症サポーターを取得したい方のために、職場までキャラバン・メイトの方が出前講座に来る場合もあります。
地域で複数人を対象にした一般向けの出前講座、職場で従業員たちに向けて行える事業者向けの出前講座もあります。
また、企業でキャラバン・メイトを養成し、そのキャラバン・メイトが従業員たちに認知症サポーター養成講座を行うこともあります。
このような出前講座や内部での養成プログラムは、認知症サポーターの資格取得を効率的に行い、職場や地域コミュニティで認知症サポートの体制を強化するのに役立ちます。
キャラバン・メイト養成講習
先に述べたように、認知症サポーター養成講座の講師として活動するキャラバン・メイトを育成するキャラバン・メイト養成講座があります。
キャラバン・メイト養成講座を主催するのは、自治体や全国的な職域組織・企業などの団体です。また、講座の受講料は無料です。ただし、交通費・宿泊費はご本人負担です。
ただ、受講するには要件があり、要件を満たせる方がキャラバン・メイトになれます。
キャラバン・メイト対象者
次の要件を満たすもので、年間10回程度を目安に(最低実施数3回)、「認知症サポーター養成講座」を原則としてボランティアの立場で行える者。
出典:特定非営利活動法人 地域共生政策自治体連携機構「キャラバン・メイト養成研修について」
- 認知症介護指導者養成研修修了者
- 認知症介護実践リーダー研修(認知症介護実務研修専門課程)修了者
- 介護相談員
- 認知症の人を対象とする家族の会
- 上記に準ずると自治体等が認めた者
5-1 行政職員(保健師、一般職等)
5-2 地域包括支援センター職員
5-3 愛護従事者(ケアマネージャー、施設職員、在宅介護支援センター職員等)
5-4 医療従事者(医師、看護師等)
5-5 民生児童委員
5-6 その他(ボランティア等)
※企業・職域団体が実施するキャラバン・メイト養成研修の受講対象者は、企業・職域団体が認めた者(研修担当者等認知症サポーター養成講座の講師が確実にできる者)。 ※講座回数はあくまで目安。
認知症サポーターの今後
将来5人に1人が認知症になると言われています。そんな中、新オレンジプランでは、認知症への正しい理解をしている認知症サポーターの養成と活動が支援されています。
サポーターの人数増加
2017年度末に制定された認知症サポーターの人数目標は800万人でしたが、2020年度末には、認知症サポーターの人数は1,200万人を超えました。
2020年度は、コロナウイルスの影響により認知症サポーター養成講座の開講数は前年度の半分ほどでした。
しかし2021年度はオンライン教材の活用など行って、開講数を増やす計画です。実際に、2021年は、9月の時点で認知症サポーターは1,339万人を超えています。
認知症サポーターの活動拡大
新オレンジプランでは、認知症サポーターへの支援について以下のように定めています。
認知症サポーターを量的に養成するだけでなく、あくまでもできる範囲で手助けを行うという活動の任意性は維持しつつ、養成された認知症サポーターが認知症高齢者等にやさしい地域づくりを加速するために様々な場面で活躍してもらえるようにすることに、これまで以上に重点を置く。
出典:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)
また、新オレンジプランでは、地域や職域などで行われている先進的な取り組みを紹介していく計画です。
定期的に講義の内容を復習する場を作り、認知症サポーター同士での討論など、高度な講座も増やしていくとのことです。
小・中学校での認知症サポーター養成講座の開講
新オレンジプランでは「学校教育等における認知症の人を含む高齢者への理解の推進」という項目があります。
この項目では、学校で高齢者と交流する活動を通して、認知症の人などの高齢者を理解する教育を行うとしています。
新オレンジプランでは、大人だけではなく子供たちにも認知症への理解を広げる計画がされているのです。
また、この項目では小・中学校での認知症サポーター養成講座を普及するともしています。
大学などでも、学生ボランティアが認知症の高齢者と関わりが持てるよう取り組むともしています。
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認知症サポーターについてまとめ
- 認知症サポーターは、地域で認知症の方が生活しやすくするなどの役割がある
- 認知症サポーターのさりげない手助けで、認知症の方やご家族のストレスが軽減できる
- 近所の方などが認知症の疑いがあるときは、イライラせず優しく声をかけて手助けしよう
認知症サポーターは、認知症の方やご家族が地域で引き続き安心して暮らせるお手伝いをする役割があります。
ボランティアをしたい方、認知症の方への対応を知りたい方はもちろん、認知症について正しい知識を得て、自分や家族が認知症になったときに備えたいという方にも、認知症サポーターの取得はおすすめです。
認知症について知識をつけ、皆さんが暮らしやすい社会を作りましょう!
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。
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