埼玉県の老人ホームの特徴
埼玉県の老人ホームの特徴について詳しく見てみましょう。
埼玉県の地理的特徴と介護施設の特徴
都心へのアクセスの良さと自然の豊かさが共存している、住みやすいと人気の埼玉県。令和3年10月1日時点の人口は、約734万人です。
東京都と比較しても家賃相場も低く住みやすい埼玉県では、都市部を中心として高度成長期からニュータウンや団地が建設されました。
この時期から埼玉県で生活している団塊の世代の高齢化により、県内の介護施設のニーズが高まってくることが予想されています。
2010年以降、埼玉県では特定施設の建設許可がおり、介護施設が新設されやすくなりました。そのため、近年介護施設が増加傾向です。
そんな埼玉県の介護施設の費用を見てみると、入居一時金の相場は80万円ほど。入居一時金が無料の施設もあります。月額利用料は15~17万円ほどの施設が多く、東京都や神奈川県と比較しても低コストでの入所が可能な施設が多いようです。
埼玉県の介護施設価格概観
埼玉県のココファンの介護施設の入居金・月額費用それぞれの平均値・中央値は以下のようになります。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
埼玉県 |
382,043円 |
168,800円 |
全国 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
埼玉県 |
159,097円 |
148,250円 |
全国 |
169,518円 |
158,250円 |
入居金は、施設によって金額の幅が大きいため、平均値は全国平均と比較すると高額になっていますが、中央値は全国平均より安い水準となっています。
また、月額費用は平均値と中央値がいずれも全国平均と比較して安くなっています。埼玉県の老人ホームは、費用面で利用しやすい施設と言えるのではないでしょうか。
埼玉県の高齢者人口
埼玉県の高齢者人口の年次推移を見てみましょう。
埼玉県 彩の国統計情報館によると、県内の高齢者人口は、1990年時点では53万人程度だったものの、年々増加がみられ、2019年時点では191万人とおよそ20年で4倍近くに増加しています。
今後の高齢者人口の増加率は徐々に落ちていくものの、2025年の高齢者人口は200万人を超える予想も。増加している高齢者人口の中でも、後期高齢者の人口増加が急激におこるという試算があります。
一方で、高齢者以外の人口は減少がみられています。15~64歳の人口を見てみると、2000年の501万人をピークとして2030年には422万人まで減少する予測で、0~14歳の人口も同様に2030年には78万人に減少する見込みです。
高齢者人口の増加に加えて65歳未満の人口の減少がおこると高齢化率は上昇の一途をたどります。1990年に一ケタ台だった高齢化率は2020年に27.2%となりました。さらに2030年の高齢化率は30%に近付く予測が出ています。
埼玉県の介護保険事業者・施設の状況
<埼玉県の種類別施設数>
種類 |
施設数 |
75歳以上千人あたりの施設数(埼玉県) |
75歳以上千人あたりの施設数(全国) |
訪問型介護施設数 |
1,948 |
2.01 |
3.02 |
通所型介護施設数 |
2,143 |
2.21 |
3.09 |
入所型介護施設数 |
1,174 |
1.21 |
1.96 |
特定施設数 |
470 |
0.48 |
0.30 |
居宅介護支援事業所数 |
1,707 |
1.76 |
2.17 |
福祉用具事業所数 |
522 |
0.54 |
0.73 |
介護施設数(合計) |
7,974 |
8.22 |
11.31 |
出典:日本医師会 埼玉県
上の表は、2020年9月時点の埼玉県の介護保険事業者・施設数の状況です。
埼玉県は全国平均と比較して全体的に介護資源が少ないことがわかります。とくに訪問型介護施設や通所型介護施設といった、在宅療養をサポートする施設の数が全国平均と差が大きくなっています。
また、在宅介護ほど多くの差はみられないものの、老人ホームのような入所型施設数も全国平均と比較すると少ない状況です。
埼玉県の要介護認定者数
ここでは、埼玉県の要介護認定者数の推移を見てみましょう。
訪問介護やデイサービス、ショートステイなどの公的な介護保険サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があり、介護保険の申請を行います。要介護認定者とは、介護保険制度において介護が必要と認定された方を表します。
第8期埼玉県高齢者支援計画によると、2000年の埼玉県の要介護認定者数は10万人以下でしたが、2010年に20万人、2019年の要介護認定者数は30万人を突破しています。団塊の世代が後期高齢者になる2025年以降は、さらに要介護認定者数も増える見込みです。
要介護認定者数の増加は、介護保険サービスの利用に大きく影響します。今後、介護保険給付金の増加や、介護スタッフの人材確保が課題となっています。
埼玉県の高齢者相談窓口は?
埼玉県では、介護保険サービスに関して第三者に相談できる窓口があります。
「契約内容とサービス内容が違う」「契約している時間よりも実際のサービス時間が短く、依頼したサービスが提供されていない」などといった不満を、埼玉県運営適正化委員会が受け付けています。
この委員会は、利用者やその家族の訴えから問題解決に向けて調査や助言を行う機関です。
利用している事業者に直接不満を訴える方法もありますが、直接の対話では解決が難しい場合には運営化適正委員会に相談することを検討してみましょう。
事務局は、浦和区の「彩の国すこやかプラザ」内にあります。電話や手紙などでの相談や、匿名での相談にも対応しています。
埼玉県独自の介護サービスについて
以下では、埼玉県独自の介護サービスご近所型介護予防について解説していきます。
埼玉県における介護予防事業の方向性によると、ご近所型介護予防では、「近くで」「みんなと」「効果ある」という3つのポイントを掲げ、高齢者が自宅の近くの送迎が不要な場所で集まってリハビリテーションを行うことを推進しています。
近隣住民がお互いに協力して効果のある介護予防体操に日常的に取り組むことは、高齢者の閉じこもり予防にもつながります。
会場は、公民館などの公的施設に限らず、自宅のガレージなどでもOKとされているようです。
週1回以上集まるように近所の知人・友人とグループを作ったり、町内会の会合で集まるなどさまざまな方法でメンバーを集めると、埼玉県からリハビリ専門職が派遣され運動指導を受けることができます。
埼玉県の地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムとは、要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護予防・生活支援をその地域内で提供することです。
団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、地域包括ケアシステムの構築が、全国的に推進されています。
システムは市町村や都道府県が地域の自主性に基づいて地域の特性に応じて作り上げていくことが必要とされており、埼玉県では地域包括ケアシステムの柱として、以下の5つに重点的に取り組んでいます。
- 在宅サービス
- 地域生活サポート体制の整備
- 介護予防事業
- 認知症対策の支援
- 施設の充実化
それぞれの取り組みついて、詳しく見てみましょう。
在宅サービス
要介護状態になっても住み慣れた自宅で過ごせるような、24時間体制での訪問介護や訪問看護が可能な体制づくりが必要です。
また、小規模多機能型居宅介護や老人保健施設などの地域の介護保険サービスの中核を担う施設整備を推進しています。
地域生活のサポート体制の整備
地域包括支援センターの機能の向上を目指します。
定期的に開催している地域ケア会議では、地域の在宅医療・介護の課題を行政・民間の介護事業者・地域の開業医や病院スタッフで検討します。会議を通して、地域の在宅医療・介護職の顔の見える関係づくりも行っています。
介護予防事業
厚生労働省の介護予防・日常生活総合支援事業に則った介護予防事業に取り組んでいます。
ご近所型介護予防をはじめとして地域で取り組むことのできるリハビリテーション推進を行っています。
認知症対策
認知症対策は、理解を深めるための普及活動や、患者を介護する家族への支援、早期発見・早期治療ができる体制づくりが重要です。
地域単位での認知症初期集中支援チームの設置や、権利擁護の強化が行われています。
施設の充実化
施設の充実化は、重度の要介護状態の方が入所する特別養護老人ホームに限りません。
サービス付き高齢者住宅(サ高住)や高齢者向けの公営住宅など、要介護の低い方でも利用できるような生活の場の建設が推進されています。
胃ろうの方の老人ホーム選びのポイント
この記事は医師に監修されています
中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
矢野 大仁 先生
胃ろうを行っている方が、老人ホームを選ぶ際に重視すべきポイントについて解説します。
そもそも胃ろうでも老人ホームに入れるの?
2012年頃までは、老人ホームの約70%で胃ろうの方の受け入れを制限していました。
その要因は、胃ろう対応出来る環境が整っている老人ホームが少なかったためです。
しかし、2012年に行われた介護保険法の改正により、現在は胃ろう対応が出来る老人ホームが増加してきています。
とはいえ、胃ろうのケアは看護師や医師が行う医療行為であるため、どこの老人ホームでも受け入れられるわけではないのです。
胃ろうの方の老人ホームへの入居は、近隣の医療機関との連携や、介護職員の人員体制、看護師等医療職員の配置、老人ホームの設備といった、老人ホームの受け入れ体制が整っていることが条件になります。
胃ろうの方や、体調に不安がある方は、希望する老人ホームの医療の連携、介護体制について十分に確認した上で入居を検討しましょう。
胃ろうの基本情報
胃ろうについて、詳しく解説していきます。
胃ろうが必要な状態
胃ろうが必要になるには、下記のような状態にあることが考えられます。
寝たきりの状態で起こる床ずれの原因の1つとなるのが、栄養不足があります。
胃ろうで足りない栄養を補うことで、床ずれの悪化を防いだり、場合によっては体の機能回復に繋がることがあります。
認知症や意識障害、脳血管疾患や神経筋疾患などの影響で口から食べることが難しい場合や、点滴では栄養が不足するときに胃ろうで対応することがあります。
加齢や病気の影響で、嚥下機能が低下した場合に、誤嚥を防ぐ目的の1つとして胃ろうで対応することがあります。
腸ろうの場合
腸ろうは、お腹に小さな穴を開けて、そこから小腸まで栄養を通す管(カテーテル)を通し、直接小腸まで栄養を送る処置です。
本来は胃ろうで対応することが多いですが、胃がんなどの理由で胃ろうを作ることが出来ない患者さんへの処置として、腸ろうを作ることが多いです。
介護的なケアは胃ろうと同じように行うことが多いですが、腸ろうの場合は胃ろうよりゆっくりと栄養を流さなくてはならず、時間と手間がかかります。
人員確保の面で、受け入れが難しい施設が多いのが現状です。
その他の経管栄養の場合
経管栄養は、口からの食事が難しくなった場合、胃までカテーテルを通して栄養を送る方法です。
胃ろうも経管栄養の1つです。
胃ろう以外では、鼻から胃までカテーテルを通す、経鼻経管栄養などが代表的です。
経鼻経管栄養の場合は、手術をすることなく行えるので、身体機能の回復により取り除くことも可能です。
胃ろうも経管栄養の1つですが、経管栄養の方の受け入れを容認している施設でも、胃ろうの方の受け入れをしていない場合があるため、注意が必要です。
胃ろうの方の在宅介護は非常に大変
胃ろうは誤嚥の心配がなくなり、介護が楽になると言われることがあります。
楽になる部分ももちろんありますが、家族による胃ろうの管理は、非常に大変です。
管理が不十分だと、感染症などのリスクもあります。
本人の状態を悪化させてしまう可能性も考えられます。
そのため、介護サービスを利用するなどして、プロに任せることも必要です。
胃ろうのメリット
胃ろうのメリットとして、主に以下のようなものが挙げられます。
栄養素の確保がしやすい
胃ろうの最大のメリットともいえるのが、栄養素の確保がしやすいという点です。
口から食べることが困難になると、必要な栄養素が不足しがちです。
胃ろうの場合は、胃に直接送り込むことが出来るため、必要な栄養素を確保したり、必要なカロリーを摂取することに役立ちます。
口から食事もできる
口から食べることが困難になった方が胃ろうの処置をすることが多いですが、胃ろうの方も口から食事をすることが出来ます。
胃ろうは腹部にあるため、喉や食道にカテーテルが通っていない分、経鼻経管栄養などと比べると口からの食事はしやすいと言えます。
また、嚥下訓練もしやすい特徴があります。
洋服で隠すことができる
胃ろうは腹部についているため、洋服を着てしまえば見た目では胃ろうがあるかどうか分からない点がメリットといえます。
鼻からカテーテルを通す経鼻経管栄養は、隠すことが難しく、違和感などから引き抜いてしまう方もいますが、胃ろうは目立ちにくく、引き抜く心配が少ないというところがメリットです。
運動やリハビリへの影響が小さい
胃ろうがあっても、基本的な運動やリハビリで体を動かすことは可能です。
胃ろうは洋服で隠すことが出来る点や、カテーテルが見えていないことからも、運動やリハビリに支障が少ないことも特徴です。
また、口からも食べることが出来るため、嚥下訓練を行うことも可能です。
入浴可能
医師の許可があれば、入浴することも可能です。
入浴の際は特別な処置をすることなく、普段通り入浴をすることが出来ます。
カバーをすることなく入浴が出来るため、介護する人の負担軽減にも繋がります。
清潔を保つことは皮膚トラブルの防止にもなりますし、胃ろうが付いている周辺の化膿防止にも繋がります。
誤嚥性肺炎の予防に効果がある
胃ろうは胃に直接栄養を送るため、誤嚥性肺炎の予防に繋がります。
嘔吐物などの胃酸による化学性肺炎の防止にも効果があります。
ただし、唾液等の誤嚥による細菌性肺炎はリスクが上がる可能性がありますが、口腔ケアを行ったり、口から少量でも食事を摂ることで細菌性肺炎のリスクを予防することに繋がります。
胃ろうのデメリット
一方で、胃ろうには以下のようなデメリットも存在します。
手術の必要がある
胃ろうは腹部に小さな穴を開けて設置するため、穴をあける外科手術が必要です。
手術には抵抗がある人も多く、その点がデメリットといえます。
ただ、胃ろうの手術は内視鏡を使って行うため、30分程度の短い時間で終わります。
合併症のリスクも
胃ろうで起こる可能性がある合併症には、汎発性腹膜炎や創部感染症などのリスクがあります。
合併症に関しては胃ろうに限らず、他の経管栄養法でも発生する可能性はあります。
むしろ、胃ろうの場合には合併症のリスクが他の経管栄養法よりも少ないとされています。
口腔ケアが必要
口から食べる機会が減少することで、口臭や細菌の増加など、口腔トラブルが発生しやすくなります。
こうした口腔トラブルは、食べる機会が減ることで唾液の分泌が減り、自浄作用が低下することで起こります。
口腔内のトラブルを防ぐためにも、適切な口腔ケアを行うことが大切です。
逆流することがある
胃に注入する栄養剤は液体のため、逆流する可能性があります。
逆流してしまうと誤嚥に繋がることもあるので、栄養剤を注入している最中と、注入後は30度以上上半身を起こしておく必要があります。
また、体質的に胃に入れたものが逆流しやすい症状を持っている人もいます。
このような場合は、とろみのついた栄養剤で症状が抑えられる場合があります。
胃ろうの設置は本人の意思確認も重要
日本の胃ろう利用者は25万人以上とも言われており、世界的に見ても日本は胃ろう患者が多いことが知られています。
ただ、日本では胃ろうを望まないとする人が8割以下と少ない傾向があり、本人の意思と尊厳の重視に注目されています。
胃ろう設置の最大の目的は生命維持であることが大半ですが、決して胃ろうが延命治療とは断言できません。
胃ろう患者の介護施設受け入れも増えてきたため、介護施設入居にあたって胃ろうの選択肢を辞めるという必要性はほぼ無くなりました。
そのため、本人の意思をしっかり確認し、家族も納得した上で検討することが大切です。
胃ろうが必要な方の介護施設の入居条件
胃ろうは医療行為のひとつで、2012年までは主に看護師が行うケアでした。
現在は、看護師などの医療従事者以外に、家族や所定の研修を受けた介護職員が胃ろうの対応が出来るようになりました。
とはいえ、どの介護施設でも受け入れられるわけではありません。
胃ろう患者が断られる理由には、
- 看護師が日中、もしくは24時間常駐がない
- 介護職員への研修が進んでいない
- 胃ろう患者のための設備が整っていない
このような理由から断られることがあります。
胃ろうの方が施設を探す場合には、検討段階から胃ろうを使用していることを伝え、入居後安心して暮らせる環境かどうかをしっかり確認することが大切です。
胃ろう対応可能な介護施設選びで重視する点
それでは実際に、胃ろうの方が施設選びをする場合、どのような施設を選ぶべきか紹介していきます。
口腔ケアに精通している
胃ろうの方で、口から食べる機会が減ると、口腔内の状態が悪くなりがちです。
口から食べる機会が減ることで、口の中を清潔に保つ重要な役割を持っている唾液の分泌が減るためです。
口の中に細菌が繁殖すると、虫歯や口内炎になったり、口臭の原因になったりします。
肺炎にかかる可能性などもあります。
そのため、口腔ケアによって口腔内を清潔な状態に保つ必要があります。
口腔ケアをしっかり行っている施設を選ぶ基準にしましょう。
入居者の体を清潔に保とうとしている
胃ろうを設置していると、入浴が出来ないイメージがあります。
実際には胃ろうに特別な保護をしなくても、普段通り入浴をすることが出来ます。
入浴後も、胃ろうを入れ替えたり、消毒をしたりすることなく、普段通りのケアで充分です。
むしろ、胃ろうが不潔な状態になると、感染症などの心配もあります。
そのため、身体を清潔な状態に保つ必要があり、入浴や清拭によって体を清潔に保とうとしているかどうかは、必ず確認が必要です。
栄養剤にこだわっている
胃ろうで使われる栄養素には、タンパク質が分解された状態で含まれる「消化態栄養剤」と、分解前のタンパク質がそのまま含まれている「半化態栄養剤」の2種類あります。
この2種類の栄養剤から、胃ろうを設置している方の消化能力などを見て、どの栄養剤を使用するか、医師や看護師と連携をとりながら選択してくれる施設が望ましいです。
また、胃ろうの方にとって栄養剤等の補給は健常者の食事と同じです。
胃ろうのチューブに詰まらないように注意して調理されたものであれば、医師の診断の元、何を入れても大丈夫です。
普通の食事を作るように調理したものや、野菜ジュース、スポーツドリンクなども入れることが出来ます。
こうした胃ろうの方の"食事"にも気を配っている施設であれば、安心することが出来ます。