練馬区の老人ホームの特徴
東京都練馬区の老人ホームについて、特徴と動向を紹介します。
都心部のアクセスがいい地域で介護を受けたい方におすすめの練馬区は、多様な介護サービスが選択可能な地域です。
また、練馬区の地域包括サービス・高齢者の方が健康で長生きするための地域の取り組み・介護サービス利用における不安を相談できる窓口などについても紹介します。
練馬区の地理的特徴と介護施設の特徴
まず、練馬区の地理と介護施設の特徴を紹介します。
東京都練馬区は副都心線・大江戸線などが通る交通機関の発達した土地として非常に価値が高く、マンションなどの建築も進んで栄えています。
練馬区の人口は、令和3年10月1日時点で739,679人です。
都心部ではあるものの区内には農地などの自然も残っているほか、犯罪件数についても23区内でトップレベルに少ない治安のよい地域として、高齢者の方と家族が安心できるに住みよい街です。
有料老人ホームの数は、23区でも有数の数を誇り、特に充実しています。
また、その他の介護サービス施設も充実しているため、自分のニーズに合わせてさまざまな選択肢が選べるでしょう。
さまざまな施設・サービスが選べる練馬区はその利用料も幅が広いですが、平均的な金額を見ると港区・世田谷区などの高級住宅街を有する区よりは費用が低額のところが多い地域です。
そんな練馬区では、健康長寿若返り事業・地域包括ケアにも力を入れていて、高齢者とその家族にとって魅力の多い地域と言えます。
練馬区の介護施設価格概観
以下では、練馬区の介護施設における価格概観について解説します。
練馬区のココファン介護施設における入居金・月額費用それぞれの平均値と中央値について以下の表にまとめました。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
練馬区 |
254,667円 |
254,667円 |
全国 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
練馬区 |
227849円 |
227849円 |
全国 |
169,518円 |
158,250円 |
練馬区のココファン施設における費用を、全国の施設の費用の中央値・平均値と比較すると、入居金・月額費用ともに高めだと言えるでしょう。
練馬区の高齢者人口
練馬区の発表によると、2021年1月時点の日本人の高齢者人口は約16.0万人、高齢化率は22.3%となっています。
都心部まで電車通勤・通学圏内でベッドタウン化されている練馬区は、現状では生産人口が多く、そのため高齢者割合は低い数字で推移しています。
また、毎年割合が急激に上昇しているわけでもありません。
しかし、現在は高齢者の増加率が緩やかな練馬区も、今後は若年層の減少に伴って割合が増加することが予想され、2050年頃には25%を超える見込みです。
出典:練馬区の各年1月1日の高齢者人口
練馬区の介護施設の状況
練馬区の介護施設状況について、以下の表にまとめました。
<練馬区の介護施設の種類別施設数>
施設形態 |
施設数 |
75歳以上千人あたりの施設数(練馬区) |
75歳以上千人あたりの施設数(全国) |
訪問型介護施設 |
264 |
3.26 |
3.25 |
通所型介護施設 |
229 |
2.83 |
3.43 |
入所型介護施設 |
98 |
1.21 |
2.17 |
特定施設 |
61 |
0.75 |
0.32 |
居宅支援介護事業所 |
195 |
2.41 |
2.41 |
福祉用具事業所 |
47 |
0.58 |
0.80 |
合計 |
894 |
11.05 |
12.40 |
さまざまな形態の施設が存在し個々のニーズに合った施設が選択可能な練馬区ですが、75歳以上の高齢者1,000人あたりの施設数は全国平均よりも多いわけではありません。
特に老人ホームなどの入所型介護施設数は他県の地域に比べて少ない状況となっています。
練馬区の要介護認定者数
以下では、練馬区の要介護認定者数について解説します。
令和2年度の練馬区の発表によると、2019年度の要介護認定者数は33,895人、認定率は21.0%となっています。
また、2040年には約42,000人にも認定者数が増加すると見られていますが、認定率には大きな変動はない、という推定です。
今後さらに高齢者・要介護要支援認定者の数は増えると予想されることから、
- 65歳以上の高齢者のみで構成された世帯の増加
- 65歳以上の高齢者の一人暮らし世帯の増加
- 認知症患者のための見守り支援サービス充実
などが今後の課題です。
要介護認定者の増加について、練馬区では以下のように発表しています。
要介護認定者は令和元年度の約34,000人から令和7年度の約38,000人へ約4,000人増加し、要介護認定率は21.0%から23.4%へ、2.4ポイントの増加が見込まれる。令和22年度には要介護認定者は約42,000人に達するが、要介護認定率は前期高齢者の増加に伴い、21.2%になると見込まれる。
出典:練馬区高齢者保健福祉計画・ 介護保険事業計画
練馬区の高齢者相談窓口は?
練馬区では、高齢者が介護サービスを利用するにあたって相談することが可能な保険福祉サービス苦情調整委員制度を設け、苦情や不満をヒアリングする相談窓口を設置しています。
保健福祉サービス苦情調整委員制度は、弁護士2名・元行政職員1名の三人態勢で機能しており、その役割は公平な立場として利用者・事業所の間に入り必要に応じて調査を実施することです。
場合によっては、事業所に対する注意・勧告・改善要求などをし、介護サービス利用者が安心して施設を利用できるようアドバイスを行います。
また申し立てに至らない場合でも常駐の相談委員に相談でき、ヒアリングした内容によっては委員会に取り次いでもらうことが可能なので、「まずは話を聞いてもらいたい!」という場合はこちらの利用がおすすめです。
ただし、1年以上前の出来事・裁判などで係争中の案件・既に処理済みの案件については相談できません。
練馬区独自の健康長寿若返り事業などついて
練馬区では、高齢者の介護予防と自立の支援を目的とし、独自の健康長寿若返り事業を展開しています。
この事業は、介護予防・生活支援サービス事業と一般介護予防事業で構成されていますが、主に以下のような事業を行うものです。
<介護予防・生活支援サービス事業>
- シルバー人材による簡単な日常生活支援
- 電話による安否確認サービス
- 高齢者相談センターのケアプランの作成
<一般介護予防事業>
- 高齢者のためのボランティア活動
- 食事会や体操などの通所サービス
- 生活状況・心身の健康状態チェック
このほかにも高齢者の方の要介護認定も行っており、介護予防事業をボランティアで行いながら、安否・健康状態をチェックしたり必要な場合には介護支援につなげたりしています。
練馬区の地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムとは、高齢者支援サービスを地域で一体的に提供するシステムのことです。
団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に、要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けることができるようにすることを目的としています。
住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を国をあげて取り組んでいる状況です。
地域包括ケアシステムは、各市町村・都道府県の自主性に基づいて地域の特性を活かしながら作り上げることが必要とされていますが、練馬区の地域包括ケアシステムでは、住まい・医療・介護の3つを柱に、それぞれの橋渡し役となることが目的です。
区域ごとに設置される地域包括支援センターは、練馬区内に約25ヵ所あり、地域包括ケアシステムを利用したネットワーク作りを重視して活動しています。
また、高齢者相談センターでは、医療と介護両面の相談に乗れる連携推進員を配備し、窓口にて高齢者やその家族が気軽に相談可能です。
さらに練馬区には街かどケアカフェという独自のサポートがあります。
街かどケアカフェとは、介護予防などについて相談が出来る拠点として機能するもので、高齢者などが集まってお茶を飲みながら気軽に利用できる施設です。
区内に設置された街かどケアカフェには、区の直接運営・提携団体の独自運営の双方があり、それぞれ特徴があります。
区の運営している場所で行われているのは、
- 健康に関する相談・アドバイス
- 介護体操の実施
- 薬の講座
など専門スタッフによる医療・介護などの総合的支援です。
一方、提携団体が運営している街かどケアカフェは、
- 認知症の方やその家族が集まる場所の設置
- 芸術を楽しむ教室
- 介護予防体操などで体を動かす活動
などを行っており、利用者同士の交流などを楽しむことを目的としています。
また区立の施設などで、高齢者相談センターが実地する介護予防・認知症カフェもあるためぜひ有効活用してください。
パーキンソン病の方の施設選びのポイント
この記事は医師に監修されています
中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
矢野 大仁 先生
そもそもパーキンソン病とは
パーキンソン病とは、脳内のドパミン神経細胞の減少によりドパミンという成分が減少して起こる病気で手の震えなどが代表的な症状です。
人口10万人あたり約150人の方が発症すると言われており、発症すると要介護認定を受けるのが一般的ですが、まずはパーキンソン病の症状について確認しましょう。
パーキンソン病の症状
重症度は症状によって5段階に分けられていますが、具体的な症状は下記の通りです。
安静時振戦(ふるえ)
安静時振戦とは「ふるえ」のことで、じっとしている時にふるえが止まらなくなる症状です。
なお、ペンや箸を使う時などの動作時にはふるえが消えるという特徴があります。
初期段階であれば体の左右のどちらかにふるえ症状が出ますが、2~3年後には反対側にもふるえの症状が出るようになります。
親指と人差し指で丸薬をまるめるような「丸薬丸め運動」や、踵で床を小刻みに打つような「タッピング様振戦」が代表的です。
無動
無動とは、日常生活での動きが少なくなり、動作が遅くなってしまうことです。
顔の筋肉に無動症状が出ると「仮面様顔貌」と呼ばれる、顔の筋肉がこわばり表情が乏しくなります。
他にも、字を書く際にだんだん文字が小さくなっていく「小字症」や、声が小さくなる「小声症」などの症状が代表的です。
筋強剛
筋強剛は、筋肉の収縮と弛緩のバランスが崩れて、筋肉の緊張が進んでしまう症状を指します。
関節のこわばりや脱力感の症状が代表的ですが、抵抗が一定に感じられる「鉛管現象」や、歯車のように引っかかるような抵抗が断続的に見られる「歯車現象」が代表的です。
このような、パーキンソン病による筋肉の硬直を「筋固縮」とも呼びます。
姿勢保持障害
姿勢保持障害が起きるとバランスが取りにくくなり、体が傾き転びやすくなります。
また、歩行時にどんどん加速して小走りになってしまい、自分では止まれない「突進歩行」も特徴です。
転倒のリスクがかなり高まることから、転倒しないように支えたり見守ることが重要です。
パーキンソン病の方の入居の条件
パーキンソン病を患っている方でも、基本的には老人ホームへの入居が可能です。
本来であれば「65歳以上、介護認定あり」が老人ホームに入居する条件となっていますが、パーキンソン病は厚生労働省が指定する特定疾病に含まれているため、介護認定を受けているパーキンソン病患者であれば40歳~65歳未満でも入居可能です。
ただし、入居する方が要介護認定を受けている40歳~65歳未満の男性の場合、女性スタッフが多い老人ホームへの入居は難しい場合があるので注意しましょう。
施設に入らず一人暮らしはできるのか
老人ホームなどの施設にはできるだけ頼らず、一人暮らしを続けたいという方も多いでしょう。
パーキンソン病が進んでしまうと、薬の服用タイミングが分からなくなってしまい症状が悪化して危険な状態に陥る恐れもあります。
そのため、もしパーキンソン病を発症したら施設に入るのが無難と言えるでしょう。
施設に入らことに抵抗を覚える方であれば、ショートステイの利用でも構わないため、誰かに頼ることをおすすめします。
パーキンソン病の方の補助金について
介護保険給付の他にも、パーキンソン病に罹患すると生活を支えるための補助金が出ます。
パーキンソン病の重症度の分類は、以下のように5段階に分けられていますが、Ⅱ度以下または生活機能障害度Ⅰ度以下でも、医療費の支払金額が一定以上となると医療費助成の対象となります。
なお、医療費助成制度を利用するためには、住居地の保健所に申請書や診断書などを提出して行うことになります。
介護保険制度や補助金は介護をする上で重要な役割を果たしているので、しっかり情報を集めましょう。
パーキンソン病の方が老人ホーム選びで重視すべき点
パーキンソン病は、病状の進行と共に身体の自由が無くなってしまうので、常に転倒事故の危険があります。
また、食事や着替えなどの日常動作をこなす際にも時間がかかってしまうため、適切なサポートを受けられる施設を探しましょう。
また、身体が思い通りに動かないことで気持ちが落ち込んでしまい鬱状態に陥ってしまうこともあるため要注意です。
住環境に配慮されている
老人ホームを選ぶ際には、パーキンソン病患者でも安心して移動できるかどうかをチェックしましょう。
手すりの設置や段差解消がされており、浴室などが安全に配慮された設計になっている住環境であれば、安心して暮らせるでしょう。
また、運動機能の衰えを防ぐためにも手すりの設置や家具類の配置が調整されている施設を選び、少しでも自立した生活を送れるようにしましょう。
パーキンソン病に熟知したスタッフがいるか
パーキンソン病の症状や対応を熟知しているスタッフがいれば、充実したケアを受けられるでしょう。
薬物効果に合わせて生活リズムを作るサポートもしてくれるので、患者にとって非常に頼れる存在となります。
また、病状を熟知していれば起こりやすい事故を予防するために細心の注意が払ってくれるので、安心して生活できるでしょう。
しっかりとしたリハビリを行えるか
パーキンソン病の症状を遅らせるためには、リハビリを適度に行うことが重要です。
自力でできることに関しては、時間がかかっても自力で行うようにサポートしてくれる施設を選びましょう。
なお、施設の人手や人員配備の体制が不十分だと対応が遅れてしまう場合があるためスタッフの人数もチェックしてみてください。
実際に、スタッフの介助が待ちきれずに、パーキンソン病の方が1人でトイレに向かい転倒してしまったと事例もあります。
医療連携が緊密に取れている24時間体制で看護スタッフが常駐している老人ホームを選ぶと、より安心でしょう。
選ぶ際の優先順位を決めよう
老人ホーム選びで困らないためにも、重視するべきポイントを整理して比較項目に優先順位を付けることをおすすめします。
具体的には、下記のポイントを意識してみてください。
特に、パーキンソン病の方は日常的な見守りや介護が必要不可欠なので介護体制の充実度に関しては重要度が高いです。
安心して暮らせるかどうかを最優先に考えて、施設選びを進めていきましょう。
おすすめの有料老人ホームの種類
有料老人ホームは、主に「住宅型有料老人ホーム」「介護付き有料老人ホーム」の2種類に分かれます。
介護体制やサービスを提供するための人員体制が整備されている介護付き有料老人ホームの方が、パーキンソン病の方には適していると言えるでしょう。
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅にも介護体制が充実している施設はあるので、必ずしも選択肢が介護付き有料老人ホームに限られるわけではありません。
様々な施設を比較検討した上で、ベストな施設を選んでいきましょう。
パーキンソン病の方が施設入居するリスク
パーキンソン病の方がさらに認知症を併発してしまうと、残念ながら問題行動が増えるため介護者の負担が重くなります。
また、嚥下障害も抱えてしまうと恒常的に食事介助が必要となるので、食事内容にも配慮しなければなりません。
このような症状を併発してしまっている場合、サポートを提供する余力がない施設からは入居を断られてしまうケースもあります。
また、入居後にパーキンソン病と認知症を併発した状況になるケースもあるため、入居前に退去要件に関しては必ず確認してください。
認知症を併発しても入居を継続できるか、必要な介護や支援を受けられる契約か否かは重要なポイントなので、漏れなくチェックしましょう。
室内での転倒にも注意
パーキンソン病を患ってしまうと運動機能や感覚機能が低下してしまうので転倒のリスクが高まります。
特に、コロナ禍において在宅時間が増えたことで室内での転倒事故も増えているので要注意といえるでしょう。
もし階段で転倒してしまうと大怪我にも繋がるので、同居家族のサポートや気配りが欠かせません。
予防するための運動・食事
パーキンソン病患者の方が室内での転倒を予防したり、大怪我のリスクを低減するためにも日ごろからリハビリを行う必要があります。
無理のない範囲で適度な運動やストレッチを行って筋力と柔軟性を維持したり、階段昇降やウオーキングなどを行い下半身の筋力を動かすことを意識しましょう。
また、全身の筋肉や関節を使かす動作を行えるラジオ体操も効果的なので、ぜひ実践してみてください。
食生活に関しても工夫を凝らす必要があります。
特に乳製品や、果物・肉などの摂取が少ないと、パーキンソン病になりやすいと言われています。また、チロシンは、大豆製品に多く含まれておりタンパク質の一種で、ドパミンなどの神経伝達物質の原料となる栄養素でなので積極的に摂取すると良いでしょう。
好き嫌いを避け、バランスの良い食事を心がけましょう。