福岡市の老人ホームの特徴
今回は、福岡県福岡市の老人ホームの特徴と動向について解説していきます。
福岡市の地理的特徴と介護施設の特徴
福岡市は九州一の都市として発展し、九州大学をはじめとした教育機関や行政機関などが集中しており、商業や産業の中心として重要な役割を果たしています。
九州の中でも20代など若者の人口が多い特徴があり、令和3年10月1日現在の人口は162万554人です。
なお、高齢者人口割合は令和3年3月で22.0%となっており、約4.5人に1人が65歳以上という状況です。
福岡市や北九州市では新しい高齢者施設の建設も進んでおり、基本的には高齢者の方でも安心して快適に生活できる環境が整っています。
しかし、福岡市以外の市町村では、高齢者福祉が充実しているとは言えない地域もあることから、福岡市に転入する近隣在住者が増えることも考えられるでしょう。
福岡県全体で見ると、人口10万人あたりの施設数は「59」となっていることから、(全国平均は約48)比較的施設は充実しています。
人気が高い特養では入居待ちをしている高齢者の方も多く見られますが、有料老人ホームなども多いので、特段介護施設が不足している地域というわけではありません。
高齢者施設は主に福岡市・北九州市に集中している傾向があるので、安心して医療・介護サービスを受けたいと考えている方であれば福岡市か北九州市を中心に探すと良いでしょう。
なお、1998年から施行された「福岡市福祉のまちづくり条例」では、全ての市民が生き生きとした社会を築くことを目標としており、自治体としても高齢者の方が住みやすい街づくりに注力していることが分かります。
福岡市の介護施設価格概観
福岡市にあるココファンの介護施設の入居金・月額費用の平均値・中央値は、下記の表の通りです。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
福岡市 |
269,500円 |
269,500円 |
全国 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
福岡市 |
217,450円 |
217,450円 |
全国 |
169,518円 |
158,250円 |
全国の施設の中央値・平均値と比較すると、福岡市では入居金・月額費用ともに高い水準にあると言えるでしょう。
先述したように、福岡市は九州の中でも大都市であり人気も高いことから、施設を利用するための費用は嵩みがちです。
とはいえ、充実したサービスを受けられることを考えれば、高い利用料はプラスに捉えられます。
福岡市の高齢者人口
上記のイラストの通り、ここ数年の福岡市の高齢者人口・高齢化率は右肩上がりの状況です。
福岡市の発表によると、令和3年3月現在の福岡市の65歳以上の人口は344,721人、75歳以上は164,469人となっています。
出典:福岡市の高齢者人口(令和3年8月17日)
高齢者人口割合は同時期で22.0%(65歳以上)・10.5%(75歳以上)となっており、今後も上昇傾向が続くことが予測されています。
なお、2050年には65歳以上の高齢者人口が34.3%に達するとも言われており、3人に1人が65歳以上という状況を迎えてしまいます。
現在の高齢化率は全国平均よりも低い傾向にありますが、毎年の上昇率は高い状況なので、介護施設は充実しているとは言え、健康のための自助努力は必須だと言えるでしょう。
福岡市の介護保険事業者・施設の状況
それでは、福岡市の介護保険事業者・施設の状況について見ていきましょう。
<福岡市の種類別施設数>
種類 |
施設数 |
75歳以上千人あたりの施設数(福岡市) |
75歳以上千人あたりの施設数(全国) |
訪問型介護施設数 |
710 |
4.52 |
3.25 |
通所型介護施設数 |
696 |
4.43 |
3.43 |
入所型介護施設数 |
346 |
2.20 |
2.17 |
特定施設数 |
66 |
0.42 |
0.32 |
居宅介護支援事業所数 |
436 |
2.78 |
2.41 |
福祉用具事業所数 |
152 |
0.97 |
0.80 |
介護施設数(合計) |
2,413 |
15.36 |
12.40 |
出典:日本医師会 福岡市
上記のように、福岡市の75歳以上1千人あたり施設数は全国平均を大きく上回っています。
つまり、充実した高齢者施設が備わっていることを意味しているので、在住者や近隣エリアに住んでいる方にとっては非常にありがたい状況と言えます。
福岡市の要介護・要支援認定者数と介護サービス
福岡市の発表によると、福岡市の要介護認定・要支援認定者は令和3年度の時点で70,258人となっています。
出典:福岡市
2011年から2012年にかけて介護保険サービスの利用者数は増加しており、利用率で見ると要支援1・2認定を受けている方の割合が上昇しています。
また、2012年度の介護保険サービスの利用状況は、施設サービスよりも居宅サービスを利用している方が多いです。
高齢化の進展に伴って各高齢者施設が果たす役割や重要性はますます高まっていくので、各施設の特徴について知っておくことは有意義です。
自宅近くの施設などの様子も見ながら、必要に応じて体験入所などを検討してみてください。
福岡市の高齢者相談窓口は?
福岡市の地域包括支援センターでは、介護・福祉の専門家が介護などに関する様々な相談に対応してくれます。
介護サービスに関する相談のみならず、介護予防活動・成年後見制度・消費者被害に関する相談まで幅広い分野の問題に対応してくれるので、非常に頼れる機関です。
また、市内各区に配置されている「区保険福祉センター」では、要介護認定の申請や介護保険料に関する相談など介護保険制度全般に関する相談が可能です。
福岡県国民健康保険団体連合会・福岡県運営適正化委員会では、介護保険サービスに対する不満や苦情を受け付けているので、意見したいことがあればこちらに問い合わせましょう。
福岡独自のサービス「住みよか事業」について
福岡県では、高齢者の方を支援するための独自サービスとして「住みよか事業」を展開しています。
これは、自宅のバリアフリー化などの高齢者の方に配慮した住宅に改造する場合の支給される補助制度で、最大30万円が支給されるものです。
自宅のリフォームなどを検討している方は、ぜひ制度について調べてみましょう。
また、介護予防運動・認知症予防運動として「運動からはじめる認知症予防教室」や「生き活き講座」などが行われているので、積極的に参加することをおすすめします。
市も推進している健康を促進するためのイベントなので、非常に有意義でしょう。
福岡市の地域包括ケアシステム
2025年を目途に、各自治体で高齢者の方の生活を支えるサービスを地域で一体的に提供するための地域包括ケアシステムの構築が進められています。
高齢者の方が、要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしく生活できることは心の安らぎに繋がるでしょう。
なお、地域包括ケアシステムは各地域の特性や実情に応じて、独自に仕組みづくりを進めることになっています。
なお、福岡市では2012年度から「福岡市地域包括ケアシステム検討会議」を設置して、福岡市が目指す地域包括ケアの実現を進めています。
- 多様な主体による支え合い・助け合いの実現
- 一体的で切れ目ない支援による住み慣れた地域での暮らしの実現
- 市民の主体的な取組みによる自立生活の実現
上記の3点を軸としており、介護保険事業計画や保健福祉総合計画等の行政計画と調整しながら取組みを進めています。
買い物支援や外出支援などの日常的な困りごとに対する生活支援サービスを提供する体制を整えたり、社会福祉法人やNPOなどが協力して高齢者の方の生活をサポートする体制を整えている点も特徴です。
高齢者の方が安心して暮らせる環境作りは着々と進んでいるので、今後も安心して生活できる市としての魅力を維持できるでしょう。
胃ろうの方の老人ホーム選びのポイント
この記事は医師に監修されています
中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
矢野 大仁 先生
胃ろうを行っている方が、老人ホームを選ぶ際に重視すべきポイントについて解説します。
そもそも胃ろうでも老人ホームに入れるの?
2012年頃までは、老人ホームの約70%で胃ろうの方の受け入れを制限していました。
その要因は、胃ろう対応出来る環境が整っている老人ホームが少なかったためです。
しかし、2012年に行われた介護保険法の改正により、現在は胃ろう対応が出来る老人ホームが増加してきています。
とはいえ、胃ろうのケアは看護師や医師が行う医療行為であるため、どこの老人ホームでも受け入れられるわけではないのです。
胃ろうの方の老人ホームへの入居は、近隣の医療機関との連携や、介護職員の人員体制、看護師等医療職員の配置、老人ホームの設備といった、老人ホームの受け入れ体制が整っていることが条件になります。
胃ろうの方や、体調に不安がある方は、希望する老人ホームの医療の連携、介護体制について十分に確認した上で入居を検討しましょう。
胃ろうの基本情報
胃ろうについて、詳しく解説していきます。
胃ろうが必要な状態
胃ろうが必要になるには、下記のような状態にあることが考えられます。
寝たきりの状態で起こる床ずれの原因の1つとなるのが、栄養不足があります。
胃ろうで足りない栄養を補うことで、床ずれの悪化を防いだり、場合によっては体の機能回復に繋がることがあります。
認知症や意識障害、脳血管疾患や神経筋疾患などの影響で口から食べることが難しい場合や、点滴では栄養が不足するときに胃ろうで対応することがあります。
加齢や病気の影響で、嚥下機能が低下した場合に、誤嚥を防ぐ目的の1つとして胃ろうで対応することがあります。
腸ろうの場合
腸ろうは、お腹に小さな穴を開けて、そこから小腸まで栄養を通す管(カテーテル)を通し、直接小腸まで栄養を送る処置です。
本来は胃ろうで対応することが多いですが、胃がんなどの理由で胃ろうを作ることが出来ない患者さんへの処置として、腸ろうを作ることが多いです。
介護的なケアは胃ろうと同じように行うことが多いですが、腸ろうの場合は胃ろうよりゆっくりと栄養を流さなくてはならず、時間と手間がかかります。
人員確保の面で、受け入れが難しい施設が多いのが現状です。
その他の経管栄養の場合
経管栄養は、口からの食事が難しくなった場合、胃までカテーテルを通して栄養を送る方法です。
胃ろうも経管栄養の1つです。
胃ろう以外では、鼻から胃までカテーテルを通す、経鼻経管栄養などが代表的です。
経鼻経管栄養の場合は、手術をすることなく行えるので、身体機能の回復により取り除くことも可能です。
胃ろうも経管栄養の1つですが、経管栄養の方の受け入れを容認している施設でも、胃ろうの方の受け入れをしていない場合があるため、注意が必要です。
胃ろうの方の在宅介護は非常に大変
胃ろうは誤嚥の心配がなくなり、介護が楽になると言われることがあります。
楽になる部分ももちろんありますが、家族による胃ろうの管理は、非常に大変です。
管理が不十分だと、感染症などのリスクもあります。
本人の状態を悪化させてしまう可能性も考えられます。
そのため、介護サービスを利用するなどして、プロに任せることも必要です。
胃ろうのメリット
胃ろうのメリットとして、主に以下のようなものが挙げられます。
栄養素の確保がしやすい
胃ろうの最大のメリットともいえるのが、栄養素の確保がしやすいという点です。
口から食べることが困難になると、必要な栄養素が不足しがちです。
胃ろうの場合は、胃に直接送り込むことが出来るため、必要な栄養素を確保したり、必要なカロリーを摂取することに役立ちます。
口から食事もできる
口から食べることが困難になった方が胃ろうの処置をすることが多いですが、胃ろうの方も口から食事をすることが出来ます。
胃ろうは腹部にあるため、喉や食道にカテーテルが通っていない分、経鼻経管栄養などと比べると口からの食事はしやすいと言えます。
また、嚥下訓練もしやすい特徴があります。
洋服で隠すことができる
胃ろうは腹部についているため、洋服を着てしまえば見た目では胃ろうがあるかどうか分からない点がメリットといえます。
鼻からカテーテルを通す経鼻経管栄養は、隠すことが難しく、違和感などから引き抜いてしまう方もいますが、胃ろうは目立ちにくく、引き抜く心配が少ないというところがメリットです。
運動やリハビリへの影響が小さい
胃ろうがあっても、基本的な運動やリハビリで体を動かすことは可能です。
胃ろうは洋服で隠すことが出来る点や、カテーテルが見えていないことからも、運動やリハビリに支障が少ないことも特徴です。
また、口からも食べることが出来るため、嚥下訓練を行うことも可能です。
入浴可能
医師の許可があれば、入浴することも可能です。
入浴の際は特別な処置をすることなく、普段通り入浴をすることが出来ます。
カバーをすることなく入浴が出来るため、介護する人の負担軽減にも繋がります。
清潔を保つことは皮膚トラブルの防止にもなりますし、胃ろうが付いている周辺の化膿防止にも繋がります。
誤嚥性肺炎の予防に効果がある
胃ろうは胃に直接栄養を送るため、誤嚥性肺炎の予防に繋がります。
嘔吐物などの胃酸による化学性肺炎の防止にも効果があります。
ただし、唾液等の誤嚥による細菌性肺炎はリスクが上がる可能性がありますが、口腔ケアを行ったり、口から少量でも食事を摂ることで細菌性肺炎のリスクを予防することに繋がります。
胃ろうのデメリット
一方で、胃ろうには以下のようなデメリットも存在します。
手術の必要がある
胃ろうは腹部に小さな穴を開けて設置するため、穴をあける外科手術が必要です。
手術には抵抗がある人も多く、その点がデメリットといえます。
ただ、胃ろうの手術は内視鏡を使って行うため、30分程度の短い時間で終わります。
合併症のリスクも
胃ろうで起こる可能性がある合併症には、汎発性腹膜炎や創部感染症などのリスクがあります。
合併症に関しては胃ろうに限らず、他の経管栄養法でも発生する可能性はあります。
むしろ、胃ろうの場合には合併症のリスクが他の経管栄養法よりも少ないとされています。
口腔ケアが必要
口から食べる機会が減少することで、口臭や細菌の増加など、口腔トラブルが発生しやすくなります。
こうした口腔トラブルは、食べる機会が減ることで唾液の分泌が減り、自浄作用が低下することで起こります。
口腔内のトラブルを防ぐためにも、適切な口腔ケアを行うことが大切です。
逆流することがある
胃に注入する栄養剤は液体のため、逆流する可能性があります。
逆流してしまうと誤嚥に繋がることもあるので、栄養剤を注入している最中と、注入後は30度以上上半身を起こしておく必要があります。
また、体質的に胃に入れたものが逆流しやすい症状を持っている人もいます。
このような場合は、とろみのついた栄養剤で症状が抑えられる場合があります。
胃ろうの設置は本人の意思確認も重要
日本の胃ろう利用者は25万人以上とも言われており、世界的に見ても日本は胃ろう患者が多いことが知られています。
ただ、日本では胃ろうを望まないとする人が8割以下と少ない傾向があり、本人の意思と尊厳の重視に注目されています。
胃ろう設置の最大の目的は生命維持であることが大半ですが、決して胃ろうが延命治療とは断言できません。
胃ろう患者の介護施設受け入れも増えてきたため、介護施設入居にあたって胃ろうの選択肢を辞めるという必要性はほぼ無くなりました。
そのため、本人の意思をしっかり確認し、家族も納得した上で検討することが大切です。
胃ろうが必要な方の介護施設の入居条件
胃ろうは医療行為のひとつで、2012年までは主に看護師が行うケアでした。
現在は、看護師などの医療従事者以外に、家族や所定の研修を受けた介護職員が胃ろうの対応が出来るようになりました。
とはいえ、どの介護施設でも受け入れられるわけではありません。
胃ろう患者が断られる理由には、
- 看護師が日中、もしくは24時間常駐がない
- 介護職員への研修が進んでいない
- 胃ろう患者のための設備が整っていない
このような理由から断られることがあります。
胃ろうの方が施設を探す場合には、検討段階から胃ろうを使用していることを伝え、入居後安心して暮らせる環境かどうかをしっかり確認することが大切です。
胃ろう対応可能な介護施設選びで重視する点
それでは実際に、胃ろうの方が施設選びをする場合、どのような施設を選ぶべきか紹介していきます。
口腔ケアに精通している
胃ろうの方で、口から食べる機会が減ると、口腔内の状態が悪くなりがちです。
口から食べる機会が減ることで、口の中を清潔に保つ重要な役割を持っている唾液の分泌が減るためです。
口の中に細菌が繁殖すると、虫歯や口内炎になったり、口臭の原因になったりします。
肺炎にかかる可能性などもあります。
そのため、口腔ケアによって口腔内を清潔な状態に保つ必要があります。
口腔ケアをしっかり行っている施設を選ぶ基準にしましょう。
入居者の体を清潔に保とうとしている
胃ろうを設置していると、入浴が出来ないイメージがあります。
実際には胃ろうに特別な保護をしなくても、普段通り入浴をすることが出来ます。
入浴後も、胃ろうを入れ替えたり、消毒をしたりすることなく、普段通りのケアで充分です。
むしろ、胃ろうが不潔な状態になると、感染症などの心配もあります。
そのため、身体を清潔な状態に保つ必要があり、入浴や清拭によって体を清潔に保とうとしているかどうかは、必ず確認が必要です。
栄養剤にこだわっている
胃ろうで使われる栄養素には、タンパク質が分解された状態で含まれる「消化態栄養剤」と、分解前のタンパク質がそのまま含まれている「半化態栄養剤」の2種類あります。
この2種類の栄養剤から、胃ろうを設置している方の消化能力などを見て、どの栄養剤を使用するか、医師や看護師と連携をとりながら選択してくれる施設が望ましいです。
また、胃ろうの方にとって栄養剤等の補給は健常者の食事と同じです。
胃ろうのチューブに詰まらないように注意して調理されたものであれば、医師の診断の元、何を入れても大丈夫です。
普通の食事を作るように調理したものや、野菜ジュース、スポーツドリンクなども入れることが出来ます。
こうした胃ろうの方の"食事"にも気を配っている施設であれば、安心することが出来ます。