介護保険施設とは|特養・老健・介護医療院のサービス内容や費用などを徹底解説
更新日時 2021/11/21
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「親の要介護度が高いんだけど、どの施設に入居すればいいのかわからない・・・」
「介護保険施設ってどの施設がいいのかわからない・・・」
ご家族やご親戚など、介護保険施設への入居についてお困りの方は多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では介護保険施設とはどのような施設なのかを解説し、それぞれの施設の特徴をお伝えします。
また、公的施設と民間施設の比較についても、サービス内容、費用などを一覧表でまとめ、それぞれの違いをご紹介します。
どの施設を利用すべきか迷っているという方は、それぞれの施設の特徴についてぜひ参考にしてみてください!
- 介護保険施設とは、介護保険サービスを利用して入居できる公的な介護施設
- 特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設、介護医療院の4種類
- 初期費用が0円、月額費用も安いことから人気がある
- 一方で、入居待機者の数も多く、簡単に入居できないことも
介護保険施設の種類と特徴
介護保険施設とは、介護保険サービスで利用できる公的な施設のことです。原則的には、お住まいの地域の市町村が保険者となります。
ただ、特例として、住所地特例という制度もあります。これは、住民票を移して別の市町村の介護保険施設に入居・転居するとしても、前の住民票の市町村が引き続き保険者となるというものです。
また、介護保険施設では、介護保険法に基づいたサービスが提供されます。介護保険法に基づいたサービスとは、
- 居宅サービス
- 地域密着型サービス
- 施設サービス
の3つです。
居宅サービスとは、訪問介護、通所介護、訪問看護、ショートステイ、特定施設(ケアハウスなど)への入居、福祉用具のレンタルなどです。
地域密着サービスでは、市区町村がしている業者が運営するグループホームなど地域密着型の施設に入居できます。
地域住民との交流が盛んに行われ、利用者にとってイベントとして楽しめる他、認知症などの理解を地域住民に促します。
そして、施設サービスに該当するのが介護保険施設です。介護保険施設は、どの施設も要介護1以上の認定を受けた人が入所対象です。
入所時の費用は0円で、月額の費用も他の施設よりも安いなどのメリットがあり、介護保険施設は介護施設を探している方々から人気を集めています。
介護保険施設には
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
この4種類があります。このうち、介護療養型医療施設は2023年度で廃止が決まっています。 そのため、介護療養型医療施設を介護医療院に含めて3種類とされることもあります。
これらの介護保険施設について、サービス内容を比較して表にまとめました。
比較項目 | 特別養護老人ホーム | 介護老人保健施設 | 介護医療院 (介護療養型医療施設) |
---|---|---|---|
主な目的 | 常時介護が必要な高齢者の受け入れ | リハビリによる在宅復帰 | 医学的な管理下での介護 |
要介護度 | 3以上 | 1以上 | 1以上 |
日常生活上 必要な介護 |
◎ | ○ | ○ |
医療ケア | △ | ○ | ◎ |
認知症の受け入れ | ○ | ○ | ○ |
リハビリ | ○ | ◎ | ○ |
レクリエーション | ○ | ○ | △ |
看取り | ○ | △ | ○ |
このように、それぞれの介護保険施設で利用目的が異なるため、受けられるサービスも異なります。
特に、特別養護老人ホームは介護サービスがメインであり、医療ケアが十分には受けられない場合がある点には注意が必要です。
医療ケアが必要な方は、医療ケアが受けられる施設を選ぶ必要があることには注意してください。
それぞれの施設の詳しい内容については、後ほど解説します。
おすすめの民間施設はこちらをチェック!介護保険施設の利用対象者
介護保険施設の利用条件は
- 65歳以上であること
- 介護度が要介護1以上であること(ただし、特養は要介護度3以上の方のみ)
となっています。また、以下の16種類の特定疾病に該当する場合は、通常は介護保険施設には入居できない介護保険者第二号である40歳~64歳の方でも要介護認定を受けられるので、介護保険施設に入所可能です。
16種類の特定疾病一覧
以下の病気は特定疾病に該当しており、要介護認定の申請が可能です。 要介護認定を受けると、介護保険施設などへの入居が可能となります。
- 末期のがん(医師が回復の見込みがないと判断した場合のみ)
- 関節リウマチ
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗しょう症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、パーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)、大脳皮質基底核変性症
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節、股関節に大きな変形をともなう変形性関節症
これらの16種類の特別疾病をお持ちの方で、介護や医療ケアを必要とする方は、施設への入居を検討してもよいでしょう。
特別養護老人ホーム(特養)
特養には要介護度3以上(特例の場合要介護1、2の方の可能)の高齢者が入居し、終身で介護を受けられます。 そのため、一度入居すれば、要介護度が上がったからといって退所する必要もなく、安心して過ごすことができます。
特養は公的な施設であるため、民間企業が運営している有料老人ホームよりも費用が安く設定されています。 そのため、経済的に余裕がない方でも入居が可能です。
しかし、利用料が安いために申し込みが多いことや、最近入居要件が厳しくなってきていることから、入居は難しくなっています。
そのため、特養への入居待ちをしている方々が増えています。 厚生労働省が2019年に調査した結果、入居申し込みをしているにもかかわらず入居できていない方は、29.2万人もいることが厚生労働省の発表からわかっています。
高齢化社会が進んでいる現在、その調査以降さらに入居待ちの方の人数が増えているとしてもおかしくありません。今から特養に入居することは、かなり難しいと言えるでしょう。
そのため、特養の入居を考える場合は、入居が難しいと感じた時のために民間施設の検討も同時に行うことがおすすめです。
【イラストで解説】特別養護老人ホーム(特養)とは?特徴や費用・入所条件まで紹介!
特養は終身利用が可能
特養は、入居できたら基本的に終身利用が可能です。そのため 「看取り」 をしている施設も多いのが特養の特徴だと言えます。
特に、看取り加算が算定される施設では、医師、看護職員、介護職員などが連携して、終末期に適したケアが実施されています。
ただし、看取りをするには
- 看護職員に十分な知識やスキルがあること
- 職員間のチームワークがあること
- 個室を確保すること
などの条件を満たしている必要がありますので、全ての施設で充実した看取りはできません。
看取りをお望みの方は、看取りがしっかりできる施設かをあらかじめ確認しましょう。
特養の居室形態
特養の居室には、
- 1人用の従来型個室
- ユニット型個室(10人以下用の「ユニット」(グループ)ごとに共有スペースを併設)
- 多床室(広い部屋に2~4人が生活する)
- ユニット型個室的多床室(ベッドごとに仕切りがある)
の4種類があります。どのタイプの居室に入居するかによって入居後の暮らしや入居にかかる費用に影響が出ますので、居室形態は事前に確認しましょう。
また、利用者さんご本人の性格から、その居室タイプでストレスが溜まらないかも考慮すべきポイントです。
例えば、人とコミュニケーションを取るのが苦手な方の場合、1人でゆっくり過ごせる従来型個室の方がストレスなく過ごせると考えられます。
費用も大切ですが、利用者さんご本人がどのような居室を望むかも優先することをおすすめします。
介護職員も多く配置
特別養護老人ホームの人員体制は、入居者3人に対して介護・看護職員を最低1人配置する義務があります。
また、入居者100人あたりには医師を1人以上、看護師は3人以上配置する必要があります。
ただ、医師によっては毎日常駐していないこともあります。医師には全員常勤してもらいたい場合には、事前に医師の勤務形態を確認しておきましょう。
特別養護老人ホームは、医療的ケアよりも介護ケアに力を入れている施設です。
そのため、点滴・胃ろう・経管栄養・気管切開などで医療ケアが常時必要な方の場合、入居できないこともあります。
一方、介護は24時間体制で行われています。「医療ケアは特に必要ないけれど、夜間も介護が必要だ」 という方にとって特別養護老人ホームはよい施設だと言えます。
要介護3以上の方におすすめの施設はこちら!介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(老健)とは、介護が必要な高齢者が、在宅復帰や在宅療養ができ、自立した生活ができるように支援する施設です。
長期入院後、自宅に戻るまでの期間に利用されるケースが一般的です。
介護老人保健施設(老健)とは|施設の役割や入所条件・期間・費用まで全て紹介
リハビリ支援が主な目的
老健は厚生労働省によって「在宅復帰・在宅療養支援のための拠点となる施設」「リハビリテーションを提供する機能維持・改善の役割を担う施設」とされています。
老健は介護保険施設の中でリハビリ専門の職員である、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の配置が入居者100人に対し1人以上配置することが定められています。
老健はリハビリ専門の職員の配置が義務付けられている唯一の介護保険施設であり、リハビリ支援が主な目的である施設です。
もちろん介護サービスも受けられますが、老健は入居者100人に対し常勤の医師は1人以上、看護・介護職員は入居者3人に対し1人以上で、そのうち看護職員は2/7程度と定められています。
そのため、看護ケアや医師からのサポートなども受けられます。 ただ、医師は常勤しているものの、24時間体制ではないので、この点についてはあらかじめ知っておく必要があるでしょう。
また、老健では居宅マネージャーとも連携しているため、住宅及び福祉用具の準備など、在宅復帰を可能にする環境のアドバイスも受けられます。
介護療養型医療施設(療養病床)
介護療養型医療施設は、比較的要介護度が高い要介護者を対象にしています。手厚い医療処置とリハビリを提供するための施設です。
介護療養型医療施設(療養病床)とは|費用・選び方から特養との違い・入所条件まで解説
2023年度での廃止が決定している
厚生労働省は、介護療養型医療施設を老健や介護医療院に転換させて、介護療養型医療施設を次第に減らし、最終的には2023年に廃止することを決めています。
介護療養型医療施設は、医療と介護の境目が曖昧であり、医療施設でありながら介護保険が適用されるという制度上の問題がありました。
そのため、厚生労働省は2023年に介護療養病床を完全廃止することと、介護医療院を新設することに踏み切ったのです。
介護医療院
介護医療院は、要介護者向けの介護施設であり、I型Ⅱ型があります。
Ⅰ型は重度の利用者に医療ケアを行い、Ⅱ型では自宅に戻れるようリハビリ支援を行っています。
このように、介護医療院は日常生活の身体介助に加え、医療ケアや生活支援も重視している施設です。
介護医療院は、2017年度に廃止することが決定した「介護療養型医療施設」の入居者が主に転居する施設です。
また、介護療養型医療施設で行われていた日常的な医学管理、看取り、ターミナルケアといった医療ケアを引き継いでいる施設でもあります。
介護医療院とは|費用や施設基準・サービス内容から介護療養型医療施設との違いまで解説
医療と介護、生活支援の全てを提供
介護医療院は、各種医療ケアが充実しており、投薬、処置、検査なども必要に応じて行われています。
「入院するほどではないけれど、老人ホームでは十分な対応ができない」 という高齢者の方々からの需要を満たしています。
他の介護施設と同様、入浴・排泄・食事介助、健康管理、機能訓練(リハビリテーション) が受けられることも特徴です。
また、他の入居者と交流できるようにレクリエーションなども実施されており、健康的な生活が過ごせます。
医療ケアが充実
介護医療院には医師がいるため、介護だけではなく医療のケアも受けられます。
介護医療院は、喀痰(かくたん)吸引・経管栄養などが必要な重度の利用者が対象です。
長期療養にも対応しており、ターミナルケアや看取りを行っている施設も多く、最期の瞬間まで安心して過ごせる施設です。
プライバシーも確保
介護施設では、居室をカーテンで仕切っているところもありますが、介護医療院では、パーティションや家具でしっかりした間仕切りをして、プライバシー確保をしています。
部屋の面積は、介護療養型医療施設の場合1部屋4人以下で、1人あたりの面積は6.4㎡以上と定められています。
介護医療院の場合は、Ⅰ型Ⅱ型いずれも1部屋4人以下で、1人あたりの面積は8㎡です。介護医療院の方が、より過ごしやすいような設計がされています。
要介護3以上の方におすすめの施設はこちら!介護保険施設の費用比較
介護保険施設の費用は、それぞれどのくらいなのでしょうか。
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院の3つを比較してみましょう。
種類 | 費用(初期費用) | 費用(月額費用) |
---|---|---|
特別療養老人ホーム | 0 | 5〜15万円 |
介護老人保健施設 | 0 | 8万〜14万円 |
介護医療院 | 0 | 9万〜17万円 |
特定入所者介護サービス費
特定入所者介護サービス費とは、低所得者が介護保険施設を利用する際の居住費や食事の自己負担分を軽減してくれる制度です。この制度を利用する場合には、市区町村に申請が必要です。
制度の利用条件は、以下の通りです。
- 本人および同一世帯ではない配偶者(世帯分離をしたケースなど)の住宅税が非課税
- 配偶者がいない場合は本人の預貯金額が合計で1,000万円以下、配偶者がいる場合は本人と配偶者の預貯金額が合計で2,000万円以下
費用がいくら減免されるかは、市町村が認定する 「負担限度額認定」 によって決まります。
負担限度額は4段階あり、以下の3段階に該当する人が、その段階に応じた額を減免されます。
- 生活保護受給者、あるいは世帯全員が住民税非課税の老年福祉年金受給者
- 世帯全員が住民税非課税で、かつ本人の公的年金受給額と合計所得金額が合わせて80万円以下
- 世帯全員が住民税非課税であるが、2には該当しない者
実際に自分が受けられる減免額については、担当のケアマネージャー、もしくは地域包括支援センターなどに相談することをおすすめします。
民間の介護施設の利用もおすすめ
ここまで、公的な介護施設についてご紹介してきましたが、民間の介護施設の利用もおすすめできます。
公的施設と民間施設の初期費用、月額費用、入居条件を一覧にしました。
運営 | 種類 | 費用(初期費用) | 費用(月額費用) | 条件(自立) | 条件(要支援) | 条件(要介護) | 条件(認知症) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
公的施設 | 特別養護老人ホーム | 0 | 5~15万円 | × | × | ○ | △ |
公的施設 | 介護老人保健施設 | 0 | 8~14万円 | × | × | ○ | ○ |
公的施設 | 介護療養型施設 | 0 | 9~17万円 | × | × | ○ | ○ |
公的施設 | 軽費老人ホーム | 0~数十万円 | 10~30万円 | ○ | ○ | △ | △ |
公的施設 | ケアハウス | 数十万~数百万円 | 10~30万円 | ○ | ○ | △ | △ |
民間施設 | 介護付き有料老人ホーム | 0~数百万円 | 15~30万円 | △ | △ | ○ | ◎ |
民間施設 | 住宅型有料老人ホーム | 0~数百万 | 15~30万円 | △ | ○ | ◎ | ○ |
民間施設 | グループホーム | 0~数十万円 | 15~20万円 | × | △ | ○ | ◎ |
民間施設 | 健康型有料老人ホーム | 0~数億円 | 10~40万円 | ◎ | △ | × | × |
民間施設 | サービス付き高齢者向け住宅 | 0~数十万円 | 10~30万円 | ○ | ◎ | ◎ | ○ |
民間施設 | シニア向け分譲マンション | 数千万~数億円 | 10~30万円 | ◎ | ○ | △ | △ |
介護保険施設は公的施設で利用にかかる費用も安い傾向にあるため人気があり、入居待ちになることも多いです。
そのため、民間の介護施設を検討することもおすすめします。
施設によっては、民間でも介護保険施設と費用などの条件があまり変わらない施設もあります。
全国の民間施設を探してみる!介護保険施設についてまとめ
- 介護医療院とは、ターミナルケアや看取りなど医療ケアのサービスも充実している
- 介護保険施設の費用を減免するには、特定入所者介護サービス費という制度がある
- 介護保険施設だけではなく、民間の施設もおすすめ
介護保険施設とは、入所一時金などの初期費用が0円で月額費用も安い公的施設であり、入居を希望する方が多くいます。
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院それぞれ利用目的が異なりますので、ご本人の状態に合った施設を選ぶことが大切です。
しかし、介護保険施設は入居を希望する方が多いことから入居待ちをしている方も多く、入居は難しいのが現状です。
サービスが充実しており費用も安めな民間施設もありますので、施設をお探しの方は民間の施設も検討してみることをおすすめします。
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。
監修した専門家の所属はこちら