新宿区の老人ホームの特徴
新宿区の老人ホームにはどのような特徴があるのでしょうか。新宿の老人ホームの現状と共に解説します。
新宿区の地理的特徴と介護施設の特徴
まず、新宿区の地理的特徴についてご紹介します。
新宿区の地理的特徴
「新宿区は汚い」というイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし、新宿区で老人ホームが建てられている、高齢者の方々が暮らす場所は、閑静でのどかな場所が多いです。
都会で交通の便がよいだけではなく、新宿御苑など緑が多い場所もあるため、落ち着いて暮らす場所として適しています。
また、慶応義塾大学病院、東京歯科大学病院、東京女子医科大学病院、国立国際医療研究センター戸山病院など、病院数が多いため高齢者の方々も安心して暮らすことが可能です。
なお、新宿区の人口は、2021年11月1日時点で34万1,894人で、世帯数は217,520世帯です。
出典:新宿区ホームページ
新宿区の介護施設、高齢者対策の特徴
あとのトピックで詳しく述べますが、新宿区の介護施設の費用相場は、入居金、月額費用のどちらも、全国の中央値と比べると高くなっています。
ただ、新宿では、高齢者向けのサービスとしては、要支援、要介護の状態に合わせたさまざまなサービスが用意されています。
また、65歳~74歳で特定の障害を持っている高齢者や後期高齢者に向けて後期高齢者医療制度が存在します。
後期高齢者医療制度とは、75歳以上または65歳~74歳で特定の障害を持っている高齢者が受けられる医療制度で、基本的には保険料が1割となるものです。
新宿区の介護施設価格概観
新宿区にあるココファンの介護施設での入居金・月額費用それぞれの平均値・中央値は、以下のようになります。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
新宿区 |
490,000円 |
490,000円 |
全国 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
新宿区 |
325,104円 |
325,104円 |
全国 |
169,518円 |
158,250円 |
全国平均と比べると、新宿区の老人ホームは入居金・月額費用ともに高めであることがわかります。
新宿区の高齢者人口
2015年時点での新宿区の高齢者人口は6.7万人です。
2025年の推計が6.6万人であることから、2021年時点での高齢者人口もこれに近い数値になっていることが予想できます。
高齢化率は2015年が20.0%で、東京23区内で下から5番目であり、さほど高くはありません。
新宿区の高齢者の人口は2025年まで6.6万人台と見込まれていますが、2025年には、ベビーブームの年に生まれた世代で人口が多い団塊の世代と呼ばれる人々が75歳以上の後期高齢者となります。
そのため、要支援・要介護認定者数が大幅に増えると考えられています。
出典:日本医師会(2018年3月推計)
今後、これらの人々に対する対策が必要です。新宿区では要介護認定者が少ない現在の時点で、すでに対策を実施しています。
- 介護予防教室の実施
- ストレッチや筋力の維持・向上に繋がる新宿いきいき体操の実施
- 高齢者の孤立化の防止のため、地域住民の交流を促す
このように、新宿区は高齢者が健康でいられるよう、様々な施策を実施中です。
新宿区の介護保険事業者・施設の状況
以下は、75歳以上の後期高齢者千人あたりの介護保険事業者・施設数です。
なお、これは2020年9月時点のデータとなっています。
<新宿区の種類別施設数>
種類 |
施設数 |
75歳以上千人あたりの施設数(新宿区) |
75歳以上千人あたりの施設数(全国) |
訪問型介護施設数 |
118 |
3.62 |
3.25 |
通所型介護施設数 |
88 |
2.70 |
3.43 |
入所型介護施設数 |
29 |
0.89 |
2.17 |
特定施設数 |
20 |
0.61 |
0.32 |
居宅介護支援事業所数 |
66 |
2.02 |
2.41 |
福祉用具事業所数 |
19 |
0.58 |
0.80 |
介護施設数(合計) |
340 |
10.43 |
12.40 |
出典:日本医師会 新宿区
全国と比べると、新宿区の方が多いのは訪問型介護介護施設と特定施設です。
その他は、僅差であるものも含めて、全国の方が多い状況です。
特に全国と差が大きいのは入所型介護施設で、75歳以上千人あたりの施設数で比較すると、新宿区が0.89、対して全国は2.17となっています。
新宿区の要介護認定者数
こちらの画像は、新宿区の要介護認定者数の推移のグラフです。
新宿区の発表によると2019年時点で、新宿区内の要介護認定者数は14,133人、認定率は20.5%となっています。
グラフを見るとわかるように認定者数は年々増加の一途を辿っており、2019年には遂に認定率が20%を超える結果となりました。
若者が多く住むイメージがある新宿ですが、このように介護を必要とする方も多く在住している地域であり、自治体による介護サービスも充実しています。
出典:新宿区の介護保険に関する資料(令和元年度末)
新宿区の高齢者相談窓口(委員会)は?
新宿区では、以下の高齢者相談窓口があります。
新宿区社会福祉協議会
社会福祉協議会は各市区町村にある機関で、住民に対し福祉が適切に行われることを目的とする社会福祉法人です。
新宿区社会福祉協議会が行っている高齢者相談は以下のものです。
地域包括センター(高齢者総合相談センター)
地域包括センター(高齢者総合相談センター) は、高齢者に対するさまざまなサービスを、一つの機関でまとめて支援や情報提供をすることを目的としています。
地域包括支援センターが行っている高齢者相談は以下のものです。
- 社会福祉士、保健師などによる相談
- 福祉サービスへの紹介
- 福祉サービスの利用支援
- 介護予防
- 成年後見制度
新宿区福祉総合電話相談事業
新宿区福祉総合電話相談事業とは、福祉サービスに関する問い合わせ、悩み相談などを電話で受け付けています。
法的な内容に関しては、弁護士による相談もあります。
新宿区独自の介護サービスについて
先ほども述べたように、新宿区では独自の介護予防対策を行っており、新宿区福祉部地域包括ケア推進課では、「新宿いきいき体操」 を実施しています。
「新宿いきいき体操」とは、早稲田大学スポーツ科学学術院、新宿区、新宿区民で作った介護予防の体操です。
新宿区では、その他にもさまざまな介護予防のための教室が開催されています。
参加対象者は新宿区在住の65歳以上で、要支援・要介護認定を受けていない方、介護予防・生活支援サービス事業対象者ではない方です。
月2~4回のペースで行われており、以下の教室が開催されています。参加費は無料のものと有料のものがありますが、有料でも1回100円で受講できます。
健康維持のための運動や介護予防の講演など(無料)
腰痛・膝痛予防のため、正しい姿勢を身に付ける(無料)
脳を活性化するトレーニングや運動を行い、認知症予防を行う(参加費1回100円、認知症と診断されている人は参加不可)
座ってできる筋力トレーニングを行い、上半身の筋力を鍛える(参加費1回100円、事前申し込み制)
立って行う筋力トレーニングを行い、転びにくい体作りをする(参加費1回100円、事前申し込み制)
新宿区の地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムとは、高齢者を支えるサービスを、地域で一体的に提供するサービスのことです。
団塊の世代が75歳以上になる2025年をめどにサービスの構築ができるよう、国をあげて取り組んでいます。
地域包括ケアシステムの目的は、要介護認定を受けている方でも、住み慣れている地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援をまとめて提供できるようにするというものです。
地域包括ケアシステムは、都道府県や市区町村が自主的に、地域の特性に合わせたものを作ることが必要です。
例えば、新宿区では自立した高齢者が多いことから、高齢者が自立した生活が続けられるよう生活支援を実施して、孤独死を防ぐ取り組みをしています。
新宿区在住の高齢者は自立している方が多い傾向にはありますが、家族のサポートなしで生活している方が多いため、このような取り組みを実施しないと高齢者が孤立しかねません。
高齢者の孤立を防ぐために、地域住民同士でコミュニケーションが取りやすいよう、声かけやボランティア活動などを積極的に行っています。
また、新宿区の病院では、在宅での療養を希望する高齢者のため、訪問診療、訪問看護などの体制を整える仕組みづくりを行っています。
胃ろうの方の老人ホーム選びのポイント
この記事は医師に監修されています
中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
矢野 大仁 先生
胃ろうを行っている方が、老人ホームを選ぶ際に重視すべきポイントについて解説します。
そもそも胃ろうでも老人ホームに入れるの?
2012年頃までは、老人ホームの約70%で胃ろうの方の受け入れを制限していました。
その要因は、胃ろう対応出来る環境が整っている老人ホームが少なかったためです。
しかし、2012年に行われた介護保険法の改正により、現在は胃ろう対応が出来る老人ホームが増加してきています。
とはいえ、胃ろうのケアは看護師や医師が行う医療行為であるため、どこの老人ホームでも受け入れられるわけではないのです。
胃ろうの方の老人ホームへの入居は、近隣の医療機関との連携や、介護職員の人員体制、看護師等医療職員の配置、老人ホームの設備といった、老人ホームの受け入れ体制が整っていることが条件になります。
胃ろうの方や、体調に不安がある方は、希望する老人ホームの医療の連携、介護体制について十分に確認した上で入居を検討しましょう。
胃ろうの基本情報
胃ろうについて、詳しく解説していきます。
胃ろうが必要な状態
胃ろうが必要になるには、下記のような状態にあることが考えられます。
寝たきりの状態で起こる床ずれの原因の1つとなるのが、栄養不足があります。
胃ろうで足りない栄養を補うことで、床ずれの悪化を防いだり、場合によっては体の機能回復に繋がることがあります。
認知症や意識障害、脳血管疾患や神経筋疾患などの影響で口から食べることが難しい場合や、点滴では栄養が不足するときに胃ろうで対応することがあります。
加齢や病気の影響で、嚥下機能が低下した場合に、誤嚥を防ぐ目的の1つとして胃ろうで対応することがあります。
腸ろうの場合
腸ろうは、お腹に小さな穴を開けて、そこから小腸まで栄養を通す管(カテーテル)を通し、直接小腸まで栄養を送る処置です。
本来は胃ろうで対応することが多いですが、胃がんなどの理由で胃ろうを作ることが出来ない患者さんへの処置として、腸ろうを作ることが多いです。
介護的なケアは胃ろうと同じように行うことが多いですが、腸ろうの場合は胃ろうよりゆっくりと栄養を流さなくてはならず、時間と手間がかかります。
人員確保の面で、受け入れが難しい施設が多いのが現状です。
その他の経管栄養の場合
経管栄養は、口からの食事が難しくなった場合、胃までカテーテルを通して栄養を送る方法です。
胃ろうも経管栄養の1つです。
胃ろう以外では、鼻から胃までカテーテルを通す、経鼻経管栄養などが代表的です。
経鼻経管栄養の場合は、手術をすることなく行えるので、身体機能の回復により取り除くことも可能です。
胃ろうも経管栄養の1つですが、経管栄養の方の受け入れを容認している施設でも、胃ろうの方の受け入れをしていない場合があるため、注意が必要です。
胃ろうの方の在宅介護は非常に大変
胃ろうは誤嚥の心配がなくなり、介護が楽になると言われることがあります。
楽になる部分ももちろんありますが、家族による胃ろうの管理は、非常に大変です。
管理が不十分だと、感染症などのリスクもあります。
本人の状態を悪化させてしまう可能性も考えられます。
そのため、介護サービスを利用するなどして、プロに任せることも必要です。
胃ろうのメリット
胃ろうのメリットとして、主に以下のようなものが挙げられます。
栄養素の確保がしやすい
胃ろうの最大のメリットともいえるのが、栄養素の確保がしやすいという点です。
口から食べることが困難になると、必要な栄養素が不足しがちです。
胃ろうの場合は、胃に直接送り込むことが出来るため、必要な栄養素を確保したり、必要なカロリーを摂取することに役立ちます。
口から食事もできる
口から食べることが困難になった方が胃ろうの処置をすることが多いですが、胃ろうの方も口から食事をすることが出来ます。
胃ろうは腹部にあるため、喉や食道にカテーテルが通っていない分、経鼻経管栄養などと比べると口からの食事はしやすいと言えます。
また、嚥下訓練もしやすい特徴があります。
洋服で隠すことができる
胃ろうは腹部についているため、洋服を着てしまえば見た目では胃ろうがあるかどうか分からない点がメリットといえます。
鼻からカテーテルを通す経鼻経管栄養は、隠すことが難しく、違和感などから引き抜いてしまう方もいますが、胃ろうは目立ちにくく、引き抜く心配が少ないというところがメリットです。
運動やリハビリへの影響が小さい
胃ろうがあっても、基本的な運動やリハビリで体を動かすことは可能です。
胃ろうは洋服で隠すことが出来る点や、カテーテルが見えていないことからも、運動やリハビリに支障が少ないことも特徴です。
また、口からも食べることが出来るため、嚥下訓練を行うことも可能です。
入浴可能
医師の許可があれば、入浴することも可能です。
入浴の際は特別な処置をすることなく、普段通り入浴をすることが出来ます。
カバーをすることなく入浴が出来るため、介護する人の負担軽減にも繋がります。
清潔を保つことは皮膚トラブルの防止にもなりますし、胃ろうが付いている周辺の化膿防止にも繋がります。
誤嚥性肺炎の予防に効果がある
胃ろうは胃に直接栄養を送るため、誤嚥性肺炎の予防に繋がります。
嘔吐物などの胃酸による化学性肺炎の防止にも効果があります。
ただし、唾液等の誤嚥による細菌性肺炎はリスクが上がる可能性がありますが、口腔ケアを行ったり、口から少量でも食事を摂ることで細菌性肺炎のリスクを予防することに繋がります。
胃ろうのデメリット
一方で、胃ろうには以下のようなデメリットも存在します。
手術の必要がある
胃ろうは腹部に小さな穴を開けて設置するため、穴をあける外科手術が必要です。
手術には抵抗がある人も多く、その点がデメリットといえます。
ただ、胃ろうの手術は内視鏡を使って行うため、30分程度の短い時間で終わります。
合併症のリスクも
胃ろうで起こる可能性がある合併症には、汎発性腹膜炎や創部感染症などのリスクがあります。
合併症に関しては胃ろうに限らず、他の経管栄養法でも発生する可能性はあります。
むしろ、胃ろうの場合には合併症のリスクが他の経管栄養法よりも少ないとされています。
口腔ケアが必要
口から食べる機会が減少することで、口臭や細菌の増加など、口腔トラブルが発生しやすくなります。
こうした口腔トラブルは、食べる機会が減ることで唾液の分泌が減り、自浄作用が低下することで起こります。
口腔内のトラブルを防ぐためにも、適切な口腔ケアを行うことが大切です。
逆流することがある
胃に注入する栄養剤は液体のため、逆流する可能性があります。
逆流してしまうと誤嚥に繋がることもあるので、栄養剤を注入している最中と、注入後は30度以上上半身を起こしておく必要があります。
また、体質的に胃に入れたものが逆流しやすい症状を持っている人もいます。
このような場合は、とろみのついた栄養剤で症状が抑えられる場合があります。
胃ろうの設置は本人の意思確認も重要
日本の胃ろう利用者は25万人以上とも言われており、世界的に見ても日本は胃ろう患者が多いことが知られています。
ただ、日本では胃ろうを望まないとする人が8割以下と少ない傾向があり、本人の意思と尊厳の重視に注目されています。
胃ろう設置の最大の目的は生命維持であることが大半ですが、決して胃ろうが延命治療とは断言できません。
胃ろう患者の介護施設受け入れも増えてきたため、介護施設入居にあたって胃ろうの選択肢を辞めるという必要性はほぼ無くなりました。
そのため、本人の意思をしっかり確認し、家族も納得した上で検討することが大切です。
胃ろうが必要な方の介護施設の入居条件
胃ろうは医療行為のひとつで、2012年までは主に看護師が行うケアでした。
現在は、看護師などの医療従事者以外に、家族や所定の研修を受けた介護職員が胃ろうの対応が出来るようになりました。
とはいえ、どの介護施設でも受け入れられるわけではありません。
胃ろう患者が断られる理由には、
- 看護師が日中、もしくは24時間常駐がない
- 介護職員への研修が進んでいない
- 胃ろう患者のための設備が整っていない
このような理由から断られることがあります。
胃ろうの方が施設を探す場合には、検討段階から胃ろうを使用していることを伝え、入居後安心して暮らせる環境かどうかをしっかり確認することが大切です。
胃ろう対応可能な介護施設選びで重視する点
それでは実際に、胃ろうの方が施設選びをする場合、どのような施設を選ぶべきか紹介していきます。
口腔ケアに精通している
胃ろうの方で、口から食べる機会が減ると、口腔内の状態が悪くなりがちです。
口から食べる機会が減ることで、口の中を清潔に保つ重要な役割を持っている唾液の分泌が減るためです。
口の中に細菌が繁殖すると、虫歯や口内炎になったり、口臭の原因になったりします。
肺炎にかかる可能性などもあります。
そのため、口腔ケアによって口腔内を清潔な状態に保つ必要があります。
口腔ケアをしっかり行っている施設を選ぶ基準にしましょう。
入居者の体を清潔に保とうとしている
胃ろうを設置していると、入浴が出来ないイメージがあります。
実際には胃ろうに特別な保護をしなくても、普段通り入浴をすることが出来ます。
入浴後も、胃ろうを入れ替えたり、消毒をしたりすることなく、普段通りのケアで充分です。
むしろ、胃ろうが不潔な状態になると、感染症などの心配もあります。
そのため、身体を清潔な状態に保つ必要があり、入浴や清拭によって体を清潔に保とうとしているかどうかは、必ず確認が必要です。
栄養剤にこだわっている
胃ろうで使われる栄養素には、タンパク質が分解された状態で含まれる「消化態栄養剤」と、分解前のタンパク質がそのまま含まれている「半化態栄養剤」の2種類あります。
この2種類の栄養剤から、胃ろうを設置している方の消化能力などを見て、どの栄養剤を使用するか、医師や看護師と連携をとりながら選択してくれる施設が望ましいです。
また、胃ろうの方にとって栄養剤等の補給は健常者の食事と同じです。
胃ろうのチューブに詰まらないように注意して調理されたものであれば、医師の診断の元、何を入れても大丈夫です。
普通の食事を作るように調理したものや、野菜ジュース、スポーツドリンクなども入れることが出来ます。
こうした胃ろうの方の"食事"にも気を配っている施設であれば、安心することが出来ます。